建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

官民連携で進むインフラ維持管理 丸亀市

いいね ツイート
0

 香川県丸亀市が2024年度に開始する「公共施設等包括管理」。28年度までの5年間、本庁舎や小中学校、市営住宅、図書館など市内145カ所の施設の保守点検や修繕業務などの施設管理を一括して民間企業に委ねる。
 市には建築系の職員が17人いるが、住宅課など営繕部署に多く配属されており、維持管理を行う施設所管部署には必ずしも職員を配置できていないのが現状だ。所管部署ごとに建物の状態を把握し、個別に管理業務を委託していたが、職員の技術的ノウハウの不足や、重い事務負担といった課題があった。
 公共施設等包括管理では民間企業が145施設の契約の取りまとめを行い、実際の保守点検や修繕などの業務を契約した業者に委託する。民間企業が培ってきた専門的な知見を生かすことでより効率的、効果的な施設の管理と施設の安全性の確保を狙う。
 地方自治体が包括管理業務を大手企業と契約する場合、地元企業や地域経済への影響が懸念事項となる。丸亀市は、同業務の事業者選定の際、市内企業などの経営基盤の向上や受注機会の拡大、技術力向上のため、市内業者などを件数、金額で現行と同じかそれ以上の水準で最大限活用することを求めるなど、「地元のためになるような、地域と一緒に進める包括管理の仕組みづくり」に配慮した。
 職員が行っていた業務を民間委託するメリットは何か。包括管理業務の受託者に支払うマネジメント経費、いわゆるマネジメントフィーは1年当たり約6300万円だ。一方で、包括管理により軽減される職員の事務負担を金額に換算すると年間で約4600万円に上るという。つまりコストだけを見れば、年間約1700万円の負担増≠ニなる。
 しかし市は、145もの施設の状況を総合的に把握できること、施設点検にプロの目を取り入れることで安全性をより確実に保てること、施設管理に携わっていた市職員が他の業務に注力できることは、1700万円のコスト増を上回る効果があると判断した。当面、包括管理の対象は建築施設に限定する。
 民間のノウハウと技術力を活用した、公共施設サービスの提供は、同様の課題を抱える自治体のロールモデルとなるのか。注目の取り組みと課題の検証が始まろうとしている。
(四国支社)