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「施主訪問活動」という建設営業の原点に戻れ

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(1)青い鳥を探す“負のスパイラル”に陥っていないか
 
 前回はマンションデベロッパーや設計会社に頼る狩猟型の営業スタイルを脱し、苦しくても大変でも、ターゲットとして設定した施主にダイレクトにアプローチし、提案し、工事案件を発掘する農耕型の営業スタイルへの変革の必要性を最後にお話しした。
 しかし、ゼネコン各社の取り組み姿勢にもよるが、狩猟型の営業スタイルに慣れきった営業担当者にとって、この農耕型営業への転換は決して容易ではない。筆者は前回の連載(建設業の戦略営業(営業マネジメント編))で、受注成果とは工事案件数と成約率の掛け算で成立すると解説した。それでは一歩進めて工事案件を導き出すには何が必要なのか。
 営業というのは仕事(工事案件)が無ければ話にならない。だからこそ、当たり前であるが元来の習性として仕事のありそうな所に足が向き、仕事の無いところには足が向かないものである。マンションデベロッパーや設計会社に行っても仕事がないのであれば、仕事を探して施主開拓すべきであるが、この施主開拓も極めて限定した形で活動していないだろうか。
 例えば、過去の実績などで比較的会いやすい施主にだけを訪問していないだろうか。自分の枠の中で訪問先を決めて、そこだけまわって自己満足に陥っていないだろうか。
 筆者がゼネコン各社を見聞きするにつけ、営業担当者が勘と経験だけで訪問しても受注目標を達成するための必要量としての工事案件を確保することは難しくなってきているようである。今時、そんなに簡単に仕事の見つかる施主があるはずもないのだ。
 つまりは、営業担当者サイドが、安易に訪問先を、仕事の出やすさなどの自己都合で限定することは、そこだけまわって「青い鳥(工事案件)が見つからない」と嘆く結果となるのだ。
 このように施主へのダイレクトな営業も営業担当者の勘と経験のみで訪問先を限定すれば、結果的にはこのような「青い鳥を探し続けて見つからない」状態となり、工事案件があがってこないので、ますます訪問しなくなるという“負のスパイラル”に陥ることになる。

(2)工事案件創出の方程式

 これからの時代に施主への訪問活動を通して工事案件を創出していくためには、単に営業担当者の勘と経験のみで訪問しても成果が出るものではない。ではどうすれば良いのか。
 実は工事案件を創出していくためには、顧客数と商談件数がモノをいってくるのだ。この場合の顧客数とは、既存取引のある顧客と新規顧客の総数であり、受注目標を達成するために求められる必要数を質量ともに確保しなければならない。
 商談件数とは言わずと知れた単に顧客と会うだけではなく、具体的な工事案件の話を行うことが商談となる。顧客からの引き合い件数が激減している今日は商談抜きに工事案件の発生を語れないはずである。
 工事案件とは、すなわちこの顧客数と商談件数の掛け算で増減するのだ。そして、従来の顧客のところに顔さえ出せば何か工事案件の話しが出てくるような安易な営業では工事案件が出てこないことは自明の理であることを考えると、この顧客数と商談件数の掛け算は営業担当者の質量ともに努力した活動結果において初めて成し遂げられるものである。
 受注目標達成のために必要な顧客数の確保と商談件数の向上という、営業担当者にとって当たり前すぎるほどの「施主訪問活動」による建設営業の原点に今こそ愚直に戻り、徹底すべきである。
 次回は上記の必要顧客数の確保について述べていきたい。


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執筆者プロフィール

日本コンサルタントグループ建設産業システム研究所 酒井誠一