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建設業の戦略営業 −活動強化編−第5回 ターゲット顧客の見直しを図れ

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5.ターゲット顧客の見直しを図れ

(1)なぜ新規開拓を嫌がるのか、しないのか

 前回は工事案件を創出していくためには、顧客数と商談件数を質量ともに向上させることの重要性についてふれた。では、このうちの顧客数をどのように向上させていけばよいだろうか。
 通常、民間建築工事主体の営業担当者の場合、一人あたり20件から50件近くのターゲット顧客数(営業担当者が訪問対象としている顧客)を持つのが普通であると思われる。筆者からすると、この件数そのものも、今の時代には決してターゲット顧客数として多いとは思えないが、営業担当者の中には10件未満の得意先のみをただ御用聞きのように回っている人も見受けられる。
 当然、今時このような人は結果が伴わない。このような人に限って、あえてターゲット顧客を増やして訪問顧客数を増やそうという姿勢が見られないことがある。
 これは、人事考課や賃金制度も含めて営業成績に対する企業側の営業担当者へのプレッシャーのかけ方が弱いことにも起因しているが、それ以上に既存顧客以外に顧客を広げることに営業担当者の根強い抵抗感があるのも否めないのではないだろうか。
 通常、既存顧客以外にターゲット顧客を増やす方法は新規顧客企業開拓もしくは昔付き合いのあった旧顧客の開拓のいずれかである。現在の管理顧客だけでは受注目標が達成できないのであれば、単純に訪問先のターゲット顧客を新規や旧顧客で増やしていけばよいのであるが、営業担当者からすると非常に抵抗を示す人が多いのである。
 新規顧客開拓については「人脈がないと担当者に会うことすら難しいし、会えても話が工事案件のところに行く前に断られる」「この地域は景気の悪い企業ばかりだから、行っても仕事の話はない」などと訪問を試みることなく見切ってしまう営業担当者がいる。旧顧客についても「昔、お世話になった当時の担当者が皆、退職や異動などで変わっており、今行っても新規顧客と同じ」などと言ってこれまた敬遠する始末である。

(2)ターゲット顧客の見直しを定期的に図れ

 顧客訪問活動は営業担当者がターゲット顧客リストにもとづき計画的かつ戦略的に行う創造的な活動である。本来は営業担当者の自主性に任せてもよいのであるが、そのようにすると実質的には放任となり、営業担当者の都合で客先を回ることになり、実効性が伴わない。
 ではどうすべきかと言えば営業組織の中で定期的に評価し、見直しを行うのだ。この場合の定期的とは少なくとも半年に一度は見直しをかけたい。
 ターゲット顧客を一度全員がオープンにし、受注実績の度合いや工事案件の見込み度合い、今後の受注可能性などを評価し、優先順位を付け、ターゲット顧客の取捨選択を行う。そして、実績の少ない営業担当者に対しては、今以上のターゲット顧客を設定させるのである。
 筆者のコンサル指導経験では、実績の少ない営業担当者に限って、「忙しい」だの「そんなにたくさんは回れない」などと最初から逃げ口上を言う人がいるが、もともと実績の乏しい人にそのようなことを言う資格はないのだ。
 限定された顧客数で成果を出せない人は他の営業担当者より以上に汗を多くかいて(顧客の数を回る)、顧客を獲得する以外に何ができるというのだろうか。この連載をお読みになっている営業管理職や営業担当者の読者諸兄に心あたりがあれば、是非このターゲット顧客の見直しを図ってほしい。
 次回は具体的にターゲット顧客の見直し方法について解説したい。


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執筆者プロフィール

日本コンサルタントグループ建設産業システム研究所 酒井誠一