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「宅建」という資格から見えてくるもの 第2回 私が宅建講師となるまでA

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 私が転職した司法書士事務所は、補助者数などの規模で、おそらく県内(静岡県)でも3指に入るほどの大きな事務所でした。
ご承知のように、司法書士は「不動産登記」(中でも権利の登記、表示の登記は土地家屋調査士)と、会社設立や役員変更などの「商業登記」を扱う専門家です。私は、「宅建」合格の勢いをかって、登記の専門家としての司法書士になるべく、新しい生活をスタートさせました。
 皆さんもそうだと思いますが、「登記」は、ビジネス社会の中で、非常に重要な役割を持っているにもかかわらず、社会人になり、実務でその問題に直面するまで、ほとんど勉強する機会がありません(大学の法学部でも。「不動産登記法」や「商業登記法」などは通常、履修しません)。また、実際に司法書士試験向けの勉強をしてみると、例えば、「不動産登記」を理解するにあたっては、手続法である不動産登記法のみならず、その前段階としての、民法のような実体法の理解なしには、到底攻略できないことがわかりました。
 私は結局、この事務所に5年間お世話になりました。この5年の間に、私が司法書士という職業に抱いていたイメージと現実に齟齬が生じてきましたので、残念ながら、司法書士試験へのチャレンジも途中で断念しました。
 しかし、この5年間で得た、「登記」に関する知識は、その後の私の宅建講師としてのキャリア形成の中で、非常に重要な意味を持ってきます。
 なぜなら、やはり「宅建試験」でも、不動産登記法は毎年1問必ず出題されますし、民法の設問の中にも、当然のように「登記」という概念が入ってきます。
 従って、リアルに「登記」の実務の世界で勉強してきた私は、他の宅建講師にはない、いわば“切り札(=得意分野)”を手に入れることができたのです。
 次に私が就職したのは、地元の資格取得スクールでした。パソコン・簿記・宅建・行政書士などをメニューとして、一般の資格取得希望者に指導する仕事です。ここにも5年間在籍しましたが。そのうち、3年間は、夕方までは失業者の方々にビジネス実務法務を教え、夜間は、一般の資格取得希望者に宅建等を教える生活でした。
 いちばん忙しい時で、1週間に28時間(週5日として、1日平均5.6時間)授業をしていたことがあります。マイクも使わず、肉声でこれだけの時間の授業をやりますと、帰宅してからはさすがに疲れていました。
 それだからということではありませんが、気がつくと37歳でした。徐々に「これまでの経験を生かして、独立・起業したい」という思いが強くなり、ついに平成14年4月に自らの会社を設立しました。
 ここまでの経緯を簡単にまとめますと、@大学時代に法律の勉強(4年間)→A宅建協会時代に「宅建」取得(5年間)→B司法書士事務所で「登記」を学習(5年間)→B資格取得スクールで「宅建」ほか法律の講師(5年間)となり、20年間かけて「法律」と「不動産」というバックボーンが形成されていったことになります。これが、現在の宅建講師としての私を支えているものになります。
 独立開業して8年になろうとしていますが、会社を経営するにあたり、人を雇い、毎月の資金繰りを考えるよりも、私は「宅建」の授業をしている時が一番幸せです。
 それは、私のこれまでの人生を投影する場であり、受講生の皆さんとの新しい出会いの場であり、そして受講生からの「先生、合格しました。ありがとうございました」との連絡を受ける喜びの場でもあります。

※建通新聞社では、10月の宅建試験に向け、久保剛氏による宅建合格通信講座を3月に開講します。講座は全30回で、3月5日から10月8日までの毎週金曜日にDVD(2時間)をお届けします。現在受講者を募集中です。ご希望の方には、講座資料とともに昨年合格された方々の「合格体験記」をお送りします。お申し込みはこちらから
http://www.33109.jp/seminar/seminar_view.asp?Lv=1&t=62282.61&EBIDSESID=&code=209

久保 剛(潟vレスエイジェント代表取締役 不動産アナリスト)
株式会社プレスエイジェント 
ホームページ http://www.press-a.com

執筆者プロフィール

久保 剛 株式会社プレスエージェント代表取締役 不動産アナリスト メールアドレス tko@press-a.com