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実践!コスト競争力アップ 第2回 社内の現状把握の重要性

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 A社は、従業員数50名程度の、民間一般建築を主体とした中堅ゼネコンです。価格競争が厳しくなる中で、競争力のある見積作成や材料・外注業者への交渉力アップのために、「社内原価」の構築・活用に向けて動き出したところです。

 何から手をつけたら?と悩みつつも、A社がまず実施したのは社内の「現状把握」です。あるチェックリスト を参考に、現状把握を@業務の流れ、AITインフラ−に分けて進めることにしました。

 A社では、これまでIT化をさほど重視してきませんでしたので、今回も紙ベースで構築することを検討しました。しかし、将来的にはITを活用したほうが運用しやすいのではないかと考え、まずはIT面も含めて現状把握を始めることにしたのです。

 まず、@の業務の流れの現状把握では、一つの業務をする際の、情報の流れ、伝票の流れ、物の流れなどについて、担当者の話を聞きながら調べました。例えば、発注業務に関しては、A社では、各現場の責任者が現場ごとに発注していますが、全員が同じやり方でやっているわけではありません。だれが、どこから、どのようにして過去の発注単価などの情報を集めているのか、発注の記録はどのように残しているのか(ノートに手書きか、エクセルで作成か)などを詳細に把握していきました。

 次に、AITインフラについての現状把握ですが、これは会社のIT設備の状況や、従業員のITスキル、そして結果としてどのような業務にITが活用されているか等の把握です。A社で特に問題となったのは、各現場で使用するパソコンが個人の私物だったことです。そのため、OSのバージョンが違ったり、ネットワークに対応していなかったりなど、すべてがバラバラの状況でした。
 これらを使って原価データベースを構築・共有しようとしたのですから、実際にはさまざまなトラブルが発生したことはご想像いただけるかと思います。今から考えると、基本的な社内のルールづくりを先にしておいたら、もっとスムーズだったと思います。

 業務の流れとITインフラを把握した上で重要となるのは、そのバランスです。両者のバランスが取れていないとITを導入しても効果が得られにくいという調査結果も出ています。

 たとえば、発注書を切る際に、「○○工事一式」としている場合があります。この場合、発注書を切ると同時に、そのデータが自動的に社内原価データベースに、項目ごとに反映される専用ソフトを利用しようと考えたとしても、そもそも発注書が「一式」となっているわけですから、データベースに落とすことができません。A社では、材工別の明細を、各担当者が自分のノートで把握していましたので、まずはこのノートを顕在化して、社内で書式の統一化を図るなど、業務の見直しからスタートしていきました。

 次回は、少し話を戻して、A社がどのようなメンバーで現状把握を行ったのか、社内チームのご紹介をしたいと思います。

執筆者プロフィール

みどり合同経営 コンサルティング部建設業経営支援研究グループ