身近な社会学 第1回 エレファントシンドローム
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サーカスの子象は逃げ出さないよう鎖をつけて杭に繋がれる。子象は動き回りたいが動くことができない。そして、だんだん無茶をしないように躾けられ逃げ出すことができないと学習する。やがて大人になった象は、小さな頃と同じ杭と鎖に繋がれていても逃げ出すことはないという。その大きな身体と力をもってすれば壊すことはいとも簡単であるのにも関わらず、だ。一体なぜだろう。
象は小さな頃に動き回れなかった経験から「そんなことをしても無駄」だと悟っているからだという。これを『エレファントシンドローム』という。
私たちも、動ける範囲を自分で決めてしまうことがある。安全にできることを実行することも素晴らしいが、もしかするとできるかもしれないのに自分で無理やり境界線を引いてしまってはいないだろうか。自分の考えた枠の中だけで動いているということは、その中でしか行動も成長もできないということなのかもしれない。
魚の水槽に仕切り板を入れ、片方に大きな魚A、もう片方に小さな魚Bを入れる。AはBを食べようとするがガラスにぶつかり痛い思いをする。何度も繰り返しAにBを食べられないことを学習させると、そのうちガラス板をとってもAはBを食べようとしなくなるという。
不思議な光景だ。
では、AがBを再び食べるようにするためにはどうするのか。
答えは簡単。
「野生のA」を水槽に一匹入れるのだという。
時には学習し心に歯止めをかけることも必要だ。
しかし、枠を取り払って行動すると良いこともある。
それを自身で見きわめて行動する力「セルフコントロール力」を身につけたいものである。
「私もサーカスの象ではだめ」静かに呟いた。
「むしろ『野生のA』に近いと思うけど」
どこからかこんな声が聞こえてきたが、きっと気のせいだろう。
太田稔子(おおたとしこ)
キャリアカウンセラー 交流分析士 各種講師
執筆者プロフィール
太田稔子(おおたとしこ)
キャリアカウンセラー 交流分析士 各種講師
メールアドレス kerorine1205tm@yahoo.co.jp