建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

身近な社会学 第2回 シロクマのことは考えないで

いいね ツイート
0

「大勢の前で話をするとき、緊張しませんか」と聞かれることがある。
私の場合、体質なのか遺伝なのか、「神経が無いからだ」ともよく言われるが、あまり緊張しない。
これは子供の頃からで、むしろワクワクした気持ちになるから不思議だ。
(もしかすると、このワクワクが緊張なのかもしれないが。)

受講生に尋ねると過半数の人が「緊張する」に手をあげることが多い。
そこで一言 
「今日一日、絶対にシロクマのことは考えないで下さい」

こんなふうに言ったら、皆さんの脳裏には『シロクマ』が浮かんできたのではないだろうか。

わざわざ言われると、嫌でも頭から離れなくなることがある。
それまでは気に留めていなかったのに、気になりだしたら、気になって仕方がなくなってしまう。

「緊張しないように、緊張しないように」と頭の中で繰り返し考えていたら、「かえっていつもより緊張してしまった」なんて経験はありませんか。

私たちは頭で考えていることと、思っていることが逆になる
人から言われたこととは、間逆の反応をしてしまうことがよくある。
「この穴覗くな」と書いてある穴を、ついつい覗いてしまう。
「この箱を開けないでね」と渡された箱は、たいがい開けられるのが落ちだ。
「決して見ないでくださいね」と言われたお爺さんとお婆さんも、我慢できずに襖をあけてしまった。
「見るな」と言われると見たくなってしまうのが、人の悲しい性なのだろう。

緊張しない一番のこつは、何も考え無いことだと言われている。
そもそも、「緊張してはいけない」わけでも「緊張は悪い」ことでもないので、緊張してもいいのである。
自分が緊張しやすいかそうでないかを知っていることが、重要なのかもしれない。

もしかすると、
「私のことは全部忘れて」という別れ際の言葉は、
「私のことは絶対に忘れないでね」という逆の気持ちが込められているのでは…
ふと思った、今日この頃。

太田稔子(おおたとしこ)
キャリアカウンセラー 交流分析士 各種講師

執筆者プロフィール

太田稔子(おおたとしこ) キャリアカウンセラー 交流分析士 各種講師 メールアドレス kerorine1205tm@yahoo.co.jp