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実践!コスト競争力アップ 第4回 社内原価の構築に向けたインフラの整備

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 A社では、社内原価の構築について、まずは以下のような大まかなイメージを共有した上で、インフラの整備をスタートしていくこととしました。

 @入力していく社内原価は、基本的には「発注金額」とする。ただし、工事が受注できなかったなど、実際に発注に至らなかった場合にも、特殊工事等の残したいデータがあれば、外注先や資材発注先の「最終見積金額」を入力していく。
 A入力は、実際に発注業務をしている各現場の代理人が行う。そのため、遠い現場からも入力できるような仕組みを構築する。
 B当面の社内原価の用途としては、積算時および発注時に参照できるようにする。

 以上を前提に、使用する人(入力や参照)が各部署にまたがっていること、30名近い従業員が使用すること、遠い現場とのやり取りも想定されることなどから、A社ではやはりITを活用したほうがスムーズだろうと考えました。
 そこで、社内LANの構築やサーバーの設置など、ITインフラの整備から始めることになりました。

 A社のプロジェクトメンバーの中には、特にITに強いという人がいませんでした。余談ですが、このメンバーはK専務が、将来的な社長交代を見据えた際に、一緒に会社を盛り上げてもらいたいと考えた次期経営幹部の候補です。それぞれ営業や工事といった各部門で経験を積んできましたが、今後は会社全体のことも考えてほしいというK専務の思いから、今回のメンバーに選定されています。

 A社のみならず、中小企業でIT化を進めるにあたっては、特にITに強い人材がいるということは少ないと思います。また、もしそのような人材がいる場合には、その人に全面的に頼ってしまうことで、会社がどのようにデータベースを構築・活用したいかにかかわりなく、意図せぬ入れ物だけができあがってしまったり、その人が退社した際に、たちまち使えなくなるといった問題も起こり得ます。そのため、ITが得意な人がいる場合にも、いない場合にも、ITインフラの整備については、以下の3点に留意していただけるとよいのではないでしょうか。

 @現状把握をもとに、どの部署で何人ずつ使うのか、その人達のITスキルはどうか、使う頻度や場所はどうか等をきちんと想定して整備すること。これらをきちんと業者へ伝え、打合せの議事録などを残すことも大切です。
 Aハードの購入やネットワークの設定は、会社の近くの業者など、トラブル発生時の対応力を選定基準とすること。まずは、会社の評判はどうか、倒産の危険がないか、など会社そのもののチェックが重要です。担当者が信頼できるかだけでなく、その担当者が不在の場合はどうか、などもチェックします。もちろん守秘義務契約も結びます。
 Bコスト面は、導入時の初期費用のみではなく、稼働後のランニング費用やサポート費用等、トータルコストを算定し、検討する必要があります。この際に、サポート内容が適切かも検討します。

 次回は、引き続きインフラの整備に関して、ソフト導入のポイントをお話したいと思います。

執筆者プロフィール

みどり合同経営 コンサルティング部建設業経営支援研究グループ