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実践!コスト競争力アップ 第5回 社内原価の構築に向けたインフラの整備(ソフト導入)

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 社内原価構築・活用をテーマにお話していますが、実際にIT化を進めるとなると、その周辺業務の見直し・効率化も同時に進めていくことになるでしょう。社内原価の構築やその後の活用は現状の業務プラスαとなりますから、業務量を増やさないためにも、周辺業務の効率化を同時に進めることが大切です。

 そこで、会社の目指す社内原価構築のイメージや周辺業務を視野に入れながらソフトを選定する必要があります。しかし、そのような観点から、事例企業のA社が様々なソフトを調査したところ、どれも一長一短で、A社に完全にマッチしたソフトは見当たりませんでした。

 これはA社が特殊なものを想定していたというわけではなく、一般的に中小企業が社内原価の構築やその周辺業務をIT化するに当たって、十分満足できるソフトがないというのが現状だと思います。
 だからといって、オーダーメイドとするには費用もかかり、その後のメンテナンスの問題も生じます。そこで、市販のパッケージソフトを使いながら、多少当社にそぐわない点は、運用や仕組みで解決していきます。

 このようなことを前提とすると、ソフト選びについては、以下の点がポイントになるのではないかと思います。

 @必要以上に機能が多いものは避けるが、将来的に業務のIT化を拡大する時のために、後から機能を追加できるなど、拡張性・柔軟性のあるソフトが望ましい。
 Aデータの受け入れ、書き出しをエクセルファイル等にできる機能があると、後でデータを加工したりして活用できる。
 B導入済のソフトがあれば、同じシリーズでそろえると、操作性や項目名が同じで使いやすく、連携も取りやすい。ただし、これにこだわりすぎると、本来の意図からずれてしまうので注意が必要です。
 Cハード等の購入と同様に、導入実績等を調べ、信頼できるパートナーかを確認したり、サポート費用等を含めたトータルコストで検討する。
 Dハード等の業者の意見も聞いたり、その業者を購入窓口にすると、その後のトラブルの際に対応してもらいやすい。

 A社では、市販の工事原価管理システムを導入することで、実行予算管理や発注業務、支払業務などの周辺業務の効率化を図るとともに、一部をカスタマイズしてもらい、このシステムから発注金額を自動的に取りだして、検索用のデータベースに蓄積していく仕組みを作りました。
 またA社では、導入と同時に、「比較的パソコンが得意な人がそうでない人とペアになってサポートする」といった体制や、工事種類や公共・民間別に見積書のひな形を作成し、「ソフトを使って作成する方がラク」という状況を作るなど、皆が実際にソフトを使うような仕組みも作りました。もちろん、K専務からの継続的な訴えかけが、従業員を動かしたという側面もあります。

 周辺業務を含めたところでのIT化が上手く進み、業務の効率化が図られれば、人繰りの余裕(ゆとり)が生まれ、社内原価の「活用」を更に進めやすくなります。このあたりは回を改めてお話しします。

執筆者プロフィール

みどり合同経営 コンサルティング部建設業経営支援研究グループ