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実践!コスト競争力アップ 第7回 社内原価データ構築に向けてA

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 前回は、交渉した最終結果である発注金額を社内原価としてデータに残していくというお話をしました。今回は、その後どのようにして、社内原価データを蓄積していったのかを具体的に解説します。
 
 次にA社では、プロジェクトメンバーから、過去のデータを利用しようという話が出ました。しかし、いつの時点のデータから進めていくのかというところで、議論がストップしてしまいました。A社では、創業以来の資料が紙ベースで保存されています。20年分のデータをパソコンに入力する作業は誰がするのか・・・など考えると、プロジェクトメンバーはやる気を消沈していきました。

 それらの議論をだまって聞いていたK専務が、「特殊工事に関しては10年分、それ以外の工事では3年分のデータを対象としてはどうか」と提案し、「まず、スタートしないことにはだめだ」と説きました。

 A社では、このデータ蓄積の作業について、ベテラン従業員は「どのような工事のデータを保存した方がよいかという取捨選択の検証」、若手社員や経理部門メンバーなどは「実際のデータの入力」というように、全社一丸となって取り組みました。ここでも、K専務が作業の締め切りを宣言し、従業員の仕事配分について考慮し、自らも進んで作業に取り込むことで、社内原価プロジェクトがスムーズに進んでいきました。

 それらを進める中で、若手社員だけでなく、ベテラン従業員にとっても、他の従業員が手掛けた工事の原価などを知ることができ、いい刺激となったようです。また、前回プロジェクトメンバーが決めた工種に加えて、構造(RC造、木造)や工事の規模(小規模工事は割高になる)などの付加情報についても、「データとして保存してはどうか」といった提案が出されるようになってきました。

 過去のデータの蓄積、保存がある程度進んだ段階で、新たに受注する工事の情報をどのように保存していくのかが議論されました。特に、作業がスムーズに進むためには、誰が、どのタイミングでどのデータを蓄積していくのかを、しっかり決めておく必要があります。A社では、社内原価検討会(次回詳しくお話しします)が実施される月一回に合わせて、データを更新することにしました。

 ここまでの作業で、社内原価の蓄積が進みました。

 次回は社内原価の検証や社内原価検討会について説明します。

執筆者プロフィール

みどり合同経営 コンサルティング部建設業経営支援研究グループ