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身近な社会学 第9回 ユニバーサルデザイン

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「バリアフリー」とは高齢、障害を持っているなどの方のために不便な障害を取り除くこと
「ユニバーサルデザイン」とは、高齢、障害を持っている等の有無に関わらず、
すべての人が快適に利用できるように製品や建造物、生活空間などをデザインすること

両者には大きな違いがある。
前者が「その方たちのため」としているのに対して
後者は「すべての人のため」としている点である。

ユニバーサルデザインというと手で触ればわかる立体的なものは馴染みやすいが
興味深かったのが、色についての内容だ。

“緑の葉の生い茂る中の真っ赤な薔薇”
私には薔薇の花がはっきり認識できるが、これが見づらい方がたくさんいらっしゃる。
お話をしてくださった方もこのタイプで、赤と緑の区別が難しいが、
私が見づらいと感じた緑と青の区別は鮮明につくとおっしゃっていた。
色に対する感じ方が違う『色覚タイプ』が異なるのである。

現在は前述のように、様々な『色覚タイプ』が表わされているが、
私たちの中に、まだ確実に浸透されていないことも否めない。
以前は、色覚異常なんて嫌な言葉(あえて書いてみた)で表現されていたが
そもそも異常ではなく少ないだけのことなのだ。
また、少ないと言ってもこのタイプは、アジア地区では男性の4〜5%、
ヨーロッパ地区では8〜10%が相当するという。
日本で限って言うならば、20人にひとりがこのタイプで、
例えば学校のクラスの男子の中で、ひとりはいるという計算だ。
そのため、皆が利用する機関(地下鉄、公共機関)などでは
『ユニバーサルカラー』誰でも分かる色使いでデザインを考える配慮が必要である。

お話を伺っているとき、中学の頃、隣になった男子生徒のことを思い出した。
彼は、勉強も運動もでき、ユーモアのセンスがある楽しい子だった。
美術の時間、彼の色紙の裏側に『色の名前』を書いてあることに気がついた。
当時の私は色覚タイプについて全くの無知だった。
知らない・若いということは恐ろしいもので
「なんで色紙の裏に”赤”なんて書いてあるの」何のてらいもなく彼に聞いた。
すると彼は「俺さ、赤と緑がわからなくなっちゃうんだ。他の人と色の見え方が違うんだ」
とあっけらかんと言った。
私はいけないことを聞いてしまったという気持ちはあったが、
あまりにも、彼がすっきり爽やかに説明してくれたので、
『そうなんだ。そんなものなんだ』と妙に納得してしまった。
そして彼が「こんな俺、おかしいかな」と続けて聞いてきた。
私には全くおかしいという感覚がなかったことと、
こんなことを彼に聞いてしまった自分の浅はかさが恥ずかしくて
「おかしくないよ。私の方がおかしいよ」
このようなニュアンスの的外れでわけの分からないことを
精一杯の気持ちを込め、真剣に言ったことだけは覚えている。
そんな私の言葉に、彼はにっこり笑ってくれた。

それにしても、このときの中学生の彼、とても素晴らしいと思いませんか?
今はどこで何をされているのやら。

執筆者プロフィール

太田稔子(おおたとしこ) キャリアカウンセラー 交流分析士 各種講師 メールアドレス kerorine1205tm@yahoo.co.jp