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身近な社会学 第13回 メモをとる習慣

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講義中にメモを取らない人が多い。特に学生には顕著に見られる傾向だ。
なかには筆記用具すら持ってこない生徒もいる。(これは論外)
そんなときは「メモとらなくても覚えられるの。すごい!記憶力いいねぇ」
ニッコリ笑って皮肉たっぷりに言う嫌味な私。
始めは、授業の進め方に問題があるのかと思ったが、そうではないらしい。
聞けば、どの授業でもそうだという。
「だって先生、本やプリントに書いてあるからメモとることないじゃん」
ひとりの男子学生がメモをとらない理由を説明してくれた。

そもそも、どんなことをメモしているのだろう。
私の場合は、約束の時間、場所、内容、数量、持ち物、準備するものetc.
仕事に関するメモは間違えのないようにきっちりと書くことを心がけている。
他にも、今後のスケジュールや連絡先といった事務的なこと
話を聴いていてポイントだと思ったこと、記憶しておきたいこと、気づいたこと
テレビを見たり本を読んだときに、これは使えそうだと思ったネタや話題
ふと心に浮かんだ言葉のフレーズや思い、思い出の内容とそのときの気持ち
自分で勝手に作った妄想や物語、キャラクター
会った人のイメージから、行った店で食べたものや感想まで…
あらゆることを、字・絵・記号等を使って書いている。

そんなこんな、あれやこれや授業で話すと興味深く聴いてくれた。
そうなのだ。
彼らはメモをとりたくないのではなく、どうやってメモをとるかわからない
つまり『メモをとる習慣』がないのだ。

私の反省点は「当たり前」と思ってしまうところだ。
メモをとるのは当たり前と思っているので、今まで積極的に促してはいなかった。
授業で使うプリントも学生にとったら不親切なものであっただろう。
詳細まできっちりと書いてある教科書やプリントに比べ、なんとまあスカスカなこと。
しかし、このスタイルは変えるつもりはない。
親切丁寧な資料をつくる努力ではなく
「メモをとる習慣を身につけさせる」努力をしようと思う。
かっこよく言ってはみたものの
「資料を作るのが面倒なんじゃないの」という声が頭のどこからか響いた。
『いいえ、ちがいます。あくまでも、受講者の行動力と自律性を養うことが目的です』

メモでいっぱいの私の手帳を開く。
「う〜ん『プーさん』かぁ。プーさんって誰?」
「えっ『ぬれぞうきん』をどうするのだったのだろう」
「この文字なんて書いてあるの。へろへろで読めない」
「なぜここに、わけのわからない記号をつけてあるのか?」

あとから見てわからないものをメモしても意味ないじゃん。

執筆者プロフィール

太田稔子(おおたとしこ) キャリアカウンセラー 交流分析士 各種講師 メールアドレス kerorine1205tm@yahoo.co.jp