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法律が作った土壌汚染 第4回 改正土壌汚染対策法の概要B

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 今回も前回に引き続き環境省のホームページに掲載されている「改正土壌汚染対策法の概要」というフローシートを参照してください。
http://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009/ref02.pdf

〜指定の解除〜

 要措置区域と形質変更時要届出区域の話は前回までにしてきましたが、ではこの指定の解除はどうすればいいかという話になります。フローシートには「汚染の除去が行われた場合には、指定を解除」と記載されています。「汚染を除去」とはどのようなことでしょう。わかりやすいのは、汚染土壌を掘削して撤去することですね。次に、汚染土壌から汚染物質だけを取り除く方法、それと汚染物質を分解する方法です。指定を解除できるのは以上のような措置を行ったときだけです。汚染土壌を遮水シートで封じ込めたり、不溶化(汚染物質を溶け出さないように固める)では指定を解除することはできません。

〜汚染土壌の搬出規制と処理業の許可制度〜

 汚染土の運搬や処理も法律で規制されていますが、あくまでも要措置区域か形質変更時要届出区域から搬出される汚染土だけが法律の規制を受けます。ところで法律では区域指定された場所から搬出する汚染土、つまり規制を受ける汚染土を「汚染土壌」と呼び、規制を受けない汚染土を「基準不適合土壌」などといって区別しています。法律上の「汚染土壌」でなければ搬出や処理の方法など規制を受けていないのです。
 汚染土壌を搬出するに当たっては、14日前までに届出が必要です。指定を受けた土地の形質の変更の際にも14日前までに届出が必要です。搬出する土は掘り出さなければいけないので届出は一緒になります。
 汚染土壌を搬出する場合は、汚染土管理票(「マニフェスト」と言います)という伝票を発行します。宛先は運搬をする人の分と処理をする人の分です。運搬が終わると依頼者に伝票が戻って来ます。搬出依頼してから運搬終了の伝票が40日以内に戻ってくることを確認します。汚染土壌の処理も同様に、搬出日から100日以内に処理して伝票が戻ってくることを確認しないといけません。産業廃棄物の処理をするときと同じような対応が必要になるわけです。
 産業廃棄物の場合、廃棄物の収集運搬も処理処分も業の許可が必要ですが、汚染土壌の運搬については許可制度ではなく誰でも運搬することができます。汚染土壌処理業は許可が必要です。許可を受けるためには大気や水質の公害防止管理者が必要、経理的な基盤がしっかりしていること、地下水や大気のモニタリングをすること、など許可を受けるためには結構大変そうです。

〜廃棄物混じりの汚染土壌の処理は?〜

 廃棄物の不法投棄などの場所で土壌汚染があわせて見つかることはよくあります。産業廃棄物ばかりでなく我々が日常使っていた物の中にもかつては相当な重金属などが含まれていました。そのような物が捨てられて、土壌汚染を引き起こしていることは結構あると思われます。
 汚染土壌処理施設として法律で定められている施設は浄化処理施設、埋立処理施設、セメント等製造施設、分別等処理施設の4種類です。最後の分別等処理施設は今回の法改正で新たに加わった施設です。廃棄物と汚染土壌の組み合わせが結構見つかることが多いということを反映しているのでしょうが、私は最初にこの話を聞いたとき、廃棄物を分けるのなら廃棄物処理施設というならわかりますが、分別施設が汚染土壌の処理施設とはおかしなことだと思いました。
 指定された場所から廃棄物混じりの汚染土壌を搬出する場合は、廃棄物処理法のマニフェストと汚染土壌のマニフェストの両方が必要で、処理施設も廃棄物処理法の処理業の許可と土壌汚染対策法の汚染土壌処理施設の許可をあわせ持った施設に持込まないといけないことになっています。一方、指定を受けてない場所から搬出される廃棄物混じり土(基準を超えていても)は全体を混合廃棄物として廃棄物処理法の許可施設に持込むことになります。
 同じ廃棄物混じり土なのに土壌汚染対策法で指定された場所から出る物は土と廃棄物、指定を受けていない場所から搬出される廃棄物混じり土は全体を廃棄物とする考え方はずいぶん変な解釈をしたものだと思いませんか。

執筆者プロフィール

九官鳥 地質調査会社社員 メールアドレスhza01754@nifty.ne.jp