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法律が作った土壌汚染 第5回 改正土壌汚染対策法の概要C

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 今回も前回に引き続き環境省のホームページに掲載されている「改正土壌汚染対策法の概要」というフローシートを参照してください。
http://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009/ref02.pdf

〜指定調査機関〜
 今回はフローシートの一番下の「その他」欄に書いてある指定調査機関の話です。土壌汚染状況調査は環境大臣が指定した指定調査機関が実施することとなっています。指定調査機関として指定を受けるためには、土壌汚染状況調査を適正にスムーズに実行できる技術能力と経理的にもしっかりした会社であることとなっています。しかし、土壌汚染対策法を作ったときは、広く門戸を広げ、書類審査だけで登録ができる状況でした。そのため最近では1,600社ほどが登録を受けています。
 環境省の報告書(平成19年度)によれば、指定調査機関の実態は、全く業務の経験のない機関が30%、元請けの経験がない機関が42%であり、一方、元請けのみの経験しかない機関は6.6%、比較的実績の多い指定調査機関は18.8%でした。つまり、まともな指定調査機関は約1,600社の内、2割未満で8割以上は名前だけの指定調査機関であるということがわかったのです。
 新土壌汚染対策法では指定調査機関になれる会社を厳しく絞り込むこととなりました。国家試験に受かった技術管理者がいないといけないことにしたのです。実はその試験は今週の日曜日(12月19日)に行われます。試験に受かった技術管理者の配置は3年間の猶予が設けられていますが、3年過ぎると技術管理者がいない会社は指定調査機関から除外されます。そのほか業務規定の内容を細かく決めなければならなくなったり、帳簿をつけて管理をしなくてはならなくなりました。指定調査機関はいまから3年後には現在の2割の300社程度になるのではないかと思われます。
 私も指定調査機関に勤めていますが、ある同業の方は今回の法改正を「土壌汚染取り締まられ法」と言っていました。確かに看板だけの調査機関が増えるのも困ったものですが、この指定調査機関の件に限らず、今回の改正で土壌汚染対策法全般に規制色が強まったと思っています。
11月16日に指定調査機関向けに通知がだされました。環境省が指定調査機関の立入り調査を行ったら不適切な調査報告をしていたことを受けて出された通知です(「土壌汚染対策法に基づく指定調査機関に対する公正な調査の確保に係る通知の発出について」http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13138&mode=print)。

 通知は同じ調査地点での試料採取や分析を原則2回以上やってはいけないということが書いてあります。そして法に基づく調査とともに自主的に行った調査についてもそのように行いなさいとしています。自主調査とはあくまでも法の枠組み外で自主的に行う調査と理解していますが、いつの間にか法の枠に取りこまれて行くようです。

 さて、これまで5回にわたって土壌汚染対策法の概要を1枚のフローを元に説明してきました。法律の体系は、法律、施行令、施行規則があり、さらに法律の運用のために告示、施行通知があります。土壌汚染対策法のこれら一連の資料は環境省のホームページにまとまっていますので参照できます(「土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告示、通知)」http://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)。
 土壌汚染対策法の指導を行う行政は都道府県等(政令市などを含む)の担当窓口ですが、指導において特に参照して扱う法令文章は以下の通知です。土壌汚染対策法の指導を行っていく場合の具体的な内容が書いてあります。窓口へ行かれる際は一読をおすすめします(「土壌汚染対策法の一部を改正する法律による改正後の土壌汚染対策法の施行について」http://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009/no_100305002.pdf)。
 この通知の1ページ目におもしろい記述があります。「本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言であることを申し添える。」との記述です。土壌汚染対策法の指導権限は全て都道府県等にあるわけで、環境省は助言はしたけれど法の指導はあくまでも都道府県等の責任でやってくださいねという記述のようです。

執筆者プロフィール

九官鳥 地質調査会社社員 メールアドレスhza01754@nifty.ne.jp