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法律が作った土壌汚染 第11回 「災害と土壌汚染対策法」

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 3月11日に発生しました“ 東北関東大震災(東北地方太平洋沖地震)”の震災被災者の方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。国民一丸となって被災者を支援し、この未曾有の困難に立ち向かわなければならないと考えます。
 今回は「規制項目と基準値について」Cを書くつもりでしたが、予定を変更して災害と土壌汚染対策法について考えてみます。
 大地震などの災害に対しては人命救助が、まず第一であり、被災者の救護・支援、被災現場の復興と進めていくべきは論を待ちません。土壌汚染対策などの環境対策は二の次です。(原発事故に伴う危急を要する環境問題も起きていますが!)土壌汚染対策法でもその条文の中に災害対策を優先する記述があり、「非常災害」の言葉が10箇所出てきます。その多くは「非常災害のために必要な応急措置として○○を行う場合は、この限りではない」(規制の対象としない。)というものです。
 法4条では、3,000m2以上の土地の形質の変更をするものは都道府県等への届出が必要ですが非常時災害の応急措置ではこの届出が不要とされています。いま被災地で行われているガレキを撤去し運搬道路を確保するなどの改変工事(土壌の掘削を伴えば)などはまさにこれに当たると行為でしょう。
 要措置区域や形質変更時要届出区域の土地の形質を変更する場合は、14日前までに届出が必要ですが、これも非常時災害の応急措置では改変前の届出は免除されています。ただし、こちらは改変後14日以内に改変の内容を届け出ないといけないことになっています。そのほか、要措置区域等からの汚染土壌の搬出なども同様の対応となっています。
 さて、この土壌汚染対策法に記載されている「非常時災害の応急措置」とはどこまでを言うのでしょう。原稿を書いている今は大地震から1週間しか経っていないので、まさしく「非常時災害の応急措置」ですが、今後、1ヶ月、3ヶ月、半年と復興工事が進む状況で、施工30日前の届出が不要な「非常時災害の応急措置」は続けられるのでしょうか。土壌の掘削を伴うような山腹道路の修復や橋梁の架け替え工事は、応急措置が終わって本格的な復旧工事の段階で施工されていくでしょう。このときに例え調査命令が出ないまでも施工の30日前の届出が復興遅延の遠因になったりしないことを望みます。
 今回の大地震では東北から関東の沿岸に大津波が押し寄せました。場所によっては海岸線から10kmも津波が押し寄せたところもあると聞いています。津波が押し寄せ破壊された市街地に法3条の対象となるべき特定有害物質の使用施設があったところや、法3条の調査の猶予を受けていたような場所もあるかと思います。そのような場所の調査を誰がやるのか、できない場合はどうなるのか少し気になるところです。
 関東大震災の火災や第二次世界大戦の火災により港区や品川区では鉛土壌汚染の人為的バックグラウンドレベルが上がっているという報告(2009奥澤ら*)もされています。災害により土壌汚染が生じることもあります。

 地震の時、私は東北新幹線に乗っていました。新幹線は宮城県内のトンネルで止まって4時間後にトンネルを歩いて出ました。それから2箇所の避難施設に泊まり帰ることができました。今も多くの被災者が、寒さと不便な思いをして避難施設に身を寄せています。被災地の早急な復興が望まれるばかりです。
 土壌汚染対策法は公共工事の進捗に対して遅延要素になったり、必ずしも求められる社会資本投入とならない面もありうると考えています。今回の災害復興とも無関係というわけではないでしょう。

執筆者プロフィール

九官鳥 地質調査会社社員  メールアドレスhza01754@nifty.ne.jp