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知らなかったではもう遅い!労務管理の落とし穴?! 第1回 遠方のお客様への出張での移動のための時間は労働時間となるか?

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 東日本大震災から既に9月が経ちました。2011年が始まった当初は、このような未曾有の災害が起きるなど誰も予想もしていませんでした。もうすぐ激動の1年が終わろうとしています。
師走に入り、あちらこちらの現場を飛び回っている社員の方も多いのではないでしょうか。

 さて出張の扱いでは、移動時間を労働時間とすべきかどうかがよく問題となります。

 出張のための移動時間が労働時間になるかどうかは、会社の指揮命令からどれくらい解放されているかどうかを総合的に判断する事となります。

 まず労働時間とは、会社の指揮命令により労務を提供しなければならない時間を指し、拘束性があるものとされます。例えば、電車やバス、飛行機などで目的地まで移動するだけで、移動中に会社からの指揮や命令が特になければ、移動する時間は読書をしたり、食事をしたり、寝たりしてもよい自由な時間になりますので、労働時間とはされません。

 ただし、会社から指示があり、業務上必要な書類や商品・機材等を運搬しているような場合は、運搬物を常に監視をしなければならない業務が業務命令として出されているのであれば行動の自由性はありませんので、会社の指揮・命令下にあることとなり、移動時間も労働時間とみなされます。

 出張にあたり、自宅から会社に寄らず直接出張先に向かう場合などは、日常の出勤に費やす時間と同じであるとされ、所要時間は労働時間に含まれないと考えられますが、一度会社に出勤してから出張に出たり、出張先から会社に立ち寄ることを指示されている場合は、会社と出張先の間の移動時間は労働時間として扱われます。

 ちなみに出張の場合、会社の指揮命令から離れているものの、労働契約に基づき会社の命令を受けて仕事をしている事となるので、会社の指揮命令下にあり、仕事の場所はどこであっても、極端に自由に行動したり私的行動を取ったりなどがない限り、また、業務災害について特に認められない事情がない限りは、一般的には業務災害と認められます。

 運送業など「移動する」ことが業務内容となっている場合は、移動時間も労働時間とみなされる可能性があり、例えば運搬する荷物を遠方まで取りに行く場合は、その移動時間も労働時間とされるでしょう。

 また、月曜日の朝の打ち合わせに間に合わせるように、日曜日から移動する場合も、同様に会社の指揮・命令下に置かれているかで判断します。従い、出張での移動時間が単に目的地への移動だけであれば、休日労働として扱う必要はありません。

 無用な問い合わせやトラブルを防ぐためにも、就業規則や出張規程に出張中の移動時間の取扱いについて、明確に規定をしておくのがよいでしょう。

執筆者プロフィール

なりさわ社会保険労務士事務所・特定社会保険労務士 成澤紀美

成澤紀美
なりさわ社会保険労務士事務所・特定社会保険労務士
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