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建設業の「経営と安全の大切さ」 第5回 「墜落・転落災害のリスクを減らせ」

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安全は、経営者から現場管理者、一般作業員まで、工事に関係する多くの人たちの理解と協力があって実現します。
最近では、災害・事故などの発生に伴う発注者からの指名停止や監督官庁からの行政処分などのペナルティが強化され、現場施工における安全衛生管理の仕組みの在り方が、企業経営上の大きな課題となっております。このため建設業では、企業経営上のリスクを少なくするため、合理化・システム化に役立つ「品質マネジメントシステム」や「環境マネジメントシステム」と同様に、経営と一体となって全社的に取り組むことのできる「建設業労働安全衛生マネジメントシステム」(COHSMS:コスモス)の導入が進んでいます。
 各社において、COHSMS(コスモス)の研鑽(けんさん)を深め、労働安全衛生水準の向上を図ることが必要なのです。

1.「墜落・転落災害」を見てみよう
(1)通常作業での災害
墜落・転落災害を見るとき、特に重要なことは、それが「通常作業における災害である」ということです。「商店で商品を売る」のと同じように、建設業の通常業務の中での災害なのです。人の死は悲しいし、突然の死はなお悲しい。悲惨な墜落・転落死は、なお悲しいことであります。
では、これを防ぐためにはどうすればいいか。知恵を集めるために、次のようなことを検討しましょう。
検討の基本は、設備・訓練・集中ということに重点を置くことです。
地上でなら、つまずいたり、よろめいたり、足を踏み外したりすることは、いつでも誰にでもあることです。しかし、建設業にあっては、たちまちそれが墜落・転落死に直結します。その防止のために、作業者や技能者に議論・研究・工夫を求めるようにしましょう。
(2)災害防止対策
@機械的移動
梁の上の歩行を禁止し、移動は機械的移動とする案はどうでしょうか。すでに、電気工事や電話工事はそうなっています。電柱を這い上がり、体をバンドで縛って仕事をする。そんな光景は電力・電話工事の現場ではもう見られません。従って墜落事故の報道に接することもありません。機械的移動、ボックス内作業に移行した結果でしょう。
A 先行
支え、もたれ、手すりの先行を考案しましょう。
B 教育訓練経験
教育訓練経験は、事故防止の要です。教育で先人の安全作業要領・技能を受け継ぎ、訓練・経験でそれを体に覚えさせるということです。
C 高所作業者資格
教育訓練経験が欠かせない高所作業には、一定の作業資格が必要です。
D 危険に対する賃金
危険に対する賃金の割増しは、生活安定、栄養、休養のために世界共通のことでしょう。

(3)さまざまな理論
@注意力
注意することは絶対に必要です。しかし、心すべきは、「注意力には限界がある」ということです。意識して不注意になれるものではありません。また、意識して錯覚を起こすことは出来ません。問題は、注意を強調すると共に、注意すべき事項をできるだけ少なくし、必要な注意力を確保することです。「危ないところで危ない仕事をするからこそ鳶なんだ」という意見もあります。しかし、人の死を考えると、そんなことは言っていられないはずです。
A 安全帯万能論
確かに安全帯は重要です。その開発普及の努力には敬意を表します。しかし、もう一歩進めて、安全帯の要らない作業環境をつくることがもっとも重要ではないでしょうか。
B 金がない
金が掛かるという声も耳にします。その前にどれくらい金が必要かを試算すべきです。そして、業界共通のものとして、国・関係省庁・自治体に提言検討を求めることも必要です。また、不景気だから難しいということもよくいわれます。しかし、安全は不況に従属するものではありません。

(4)企業防衛のために
@墜落・転落災害は人命の損傷だけでなく、社会的・経済的損失もまた大きいものです。それだけに、事故が発生した場合の企業責任は厳しく問われることになります。結果として、企業の存続を危うくすることもあり得ます。
A現代は建設不況の時代です。しかし、決して建設不況が災害の責任を取ってくれるはずがありません。不況時であればこそ、安全法規を守られなくてはなりません。
 

全建経営指導センター
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全建経営指導センター代表 天本武