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登記を極める フクダゼミナール
Lesson1 登記ってなんだ?

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【不動産登記とは】
 不動産登記は、不動産(土地・建物)についてのさまざまな情報を目に見えやすく分かりやすくして、取引の安全と円滑をはかる制度です。不動産情報の「見える化」です。
 公の帳簿(登記簿)に記載し一般に公開するという方法を採っています。
 記載される情報としては不動産の所在・面積等のいわゆる物理的状況のほか、所有権や担保権などの権利の内容や権利者(所有者、担保権者)の住所・氏名(名称)などがあります。

【登記の種類】
 前記の「物理的状況」を記載する登記を「表示登記」、権利の内容等を記載する登記を「権利登記」といい、それぞれ登記簿の「表題部」「権利部」に記載されます。

【登記は必要か】
 表示登記に関しては法律で登記が義務付けられていますが、権利登記に関して登記は義務付けられていません。
 例えば、住宅やビルを新築した時、表題部を作る登記(表示登記の中の「表題登記」と言います)は法律上行わなければなりません。
 一方、中古住宅を買った時、売り主から買い主に住宅の所有権が移転したという所有権移転登記は法律上必ずしも行わなくても良いのです。ただ、しない事による不都合があるので実際上は行うのがほとんどです。

【権利登記をしない事による不都合】
◆事例1
 前記の中古住宅の場合を例に取って考えて見ましょう。
 買い主Bは所有者(売り主)AからAの自宅(土地建物)を買い、売買代金を支払いました。
 しかし、Bは登記する義務がなく、高額の登録免許税もかかりますから、登記をせずに放置しておきました。
 それに気が付いたAが、何も知らないCさんに、「これは私のものですからあなたに売ります」と言って売り、CもAに売買代金を支払いました。
 そしてCはBとは違い、自分への所有権移転登記を行いました。所有権が売買によってAからCに移転し、所有者がCになったという登記を高額の登録免許税を支払って行ったのです。
 これを知ったBは、先に買ったのは自分であり所有者は自分だから、Cが所有者だという登記は不当である。だから抹消せよとCを訴えました。
 この裁判はどちらが勝つでしょうか?
 この場合はCが勝つのです。
 この事例のケースを専門的な言い方で「二重譲渡」というのですが、二重譲渡がされた場合の優劣は登記の有無によって決まるというのが法律の定めなのです。
 こういう事があるので、法律上義務はなくても権利登記も行うのが通常なのです。

◆事例2
 では次の事例ではどうでしょうか。
 Aさんは自宅を新築しました。表示登記(表題登記)は法的義務があるので行いましたが、自分が所有者であるという権利登記(所有権保存登記と言います)は義務がないので放置しておきました。
 この場合は中古住宅の場合とは異なり二重譲渡の様な危険がありませんので、登記をしなくてもさほど不都合は有りません。
 しかし、この場合でも所有権保存登記をする事が多いのです。なぜでしょうか。
 それは多くの場合、住宅ローンを利用するからです。
 住宅ローンを利用した場合、融資をした銀行や信用金庫は土地と建物に担保を設定し、担保(抵当権)設定登記をするのが通常です。
 そして抵当権設定登記をするためには、前提として所有権の登記がされている事が必要なのです。抵当権の対象は所有権なので、抵当権設定登記をするためにはその対象となる所有権についても登記がされていないといけないからです。
 この様に住宅ローンを借りるためにほとんどの場合所有権の登記を行う事になるのです。

 さまざまなトラブルを避けるために登記が必要になります。ところが最近問題となっている空き家の場合はいささか事情が異なります。
 次回、Lesson2では、登記における「空き家問題」を見てみましょう。

執筆者プロフィール

フクダリーガルコントラクツ&サービシス(千代田区)代表 福田龍介

福田龍介
フクダリーガルコントラクツ&サービシス(千代田区)代表
早稲田大学法学部卒業。1989年司法書士登録。大手司法書士事務所勤務を経て2002年、フクダリーガル コントラクツ &サービシス(FLC&S) を設立、開業、数々の不動産トラブルを未然に防ぐ。05年から「中間省略登記問題」に取り組み、06年末の規制改革・民間開放推進会議の答申にも関与した。新・中間省略登記の第一人者。