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どうなる? 未加入対策後の建設業界改革
第6回 保険加入の実態把握と下請指導

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 第5回では「適切な」社会保険加入の形は一通りではなく、それぞれの事業形態等により異なることを確認しました。元請企業等の対応として次に必要なのは、実際に現場入場する各下請企業の事業形態、及び各作業員の就業形態の把握です。

 把握方法としては、未加入対策を機に社会保険に関する記載欄が追加された作業員名簿、再下請負通知書での確認が主となりますが、提出を受けた元請企業等は確認の結果、適切な保険加入に関して疑義がある場合は、下請企業に確認を求めねばなりません。
 
 疑義が生じる作業員名簿の記載として代表的なものは、作業員の健康保険が「国民健康保険」であったり、年金保険が「国民年金」であることです。この場合、その者について大きく分けると @加入対象ではない A加入義務がある社員(雇用)だが未加入 B一人親方(請負) というケースが想定されます。

 これについて@は例えば労働日数や時間が短いため、そもそも加入義務が無い者であり、この場合は記載が正しいという結論になります。Aは単純に未加入であり加入指導が必要です。

 そして多いケースがBです。まず一人親方は雇用される者ではなく、請負契約で仕事を行う立場の者を指しますので、国民健康保険・国民年金に加入していることは、保険加入の形態自体としては問題ありません。

 しかし、そもそも請負である一人親方を作業員名簿に載せること自体が適切ではなく、再下請負通知書への記載が適切な取り扱いです。これは、これまでの建設業においては、一人親方を作業員名簿に載せるほうがむしろ多数派であったことに起因する問題です。

 「請負」と「雇用」の明確化は、この業界において今に始まった問題ではありません(その法的問題点や対策については別回にて取り上げます)。ただ、今回の未加入対策(特に作業員名簿への社会保険欄追加)を機に、そこへの改善指導の機運が一気に高まっていることは事実です。

 元請企業等の下請指導のあり方として、とりあえず作業員名簿の欄が埋まっていれば良い、それ以上は特に確認はしない、という表面上の対応をする段階・時期は既に過ぎつつあります。よって今後は、その精査と、そこから改めて確認のための文書を出す、もしくは聞き取り確認を行うといった実際の指導に結びつける力が必要となってきているといえるでしょう。

執筆者プロフィール

特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市) 加藤大輔

加藤大輔
特定社会保険労務士 社会保険労務士法人エール(横浜市)
社会保険労務士法人エール(横浜市)所属。特定社会保険労務士。建設企業向けのコンサルティングを幅広く手掛けてきた社会保険未加入問題の第一人者。関連する執筆やセミナー講師など多数。