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事件から12年を経て
〜構造計算の現在と取り巻く環境〜
第4回 セカンドオピニオンとしてのクロスチェック

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「ミスがあるかも知れない」「見解が違うかもしれない」。一貫構造計算プログラムを使って安心安全な建物計画を進めるにはどうするか・・・。2本のプログラムに検証(クロスチェック)させることだと考えています。

ある項目に対してのバグ確率が3%だとして、プログラム2本ともでバグに触れる確率は0.09%。つまり、クロスチェックでOKならバグには触れていないことになります。

実は、新制度がスタートする前にクロスチェックを進言したことがあります。その時の国土交通省の回答は「良い案だとは思うが、99.9%回避できたとして、0.1%を取りこぼすことがあると、それは法制度としては認められない」というものでした。

重要なことは認定プログラムにバグがないことではありません。
大切な建物一棟一棟で、バグに触れての安全性に問題のある建設が行われないようにすることです。クロスチェックの義務化によって何故OKになる?の質問が増えると予想されますが、それこそが是が非でも潰したい危険側バグであり、その顕在化につながります。

実際、顕在/潜在を問わずバグに触れていない証明として、「セカンドオピニオンとしてのクロスチェック」を認定プログラムによる確認申請での義務にすれば多くの問題が解決します。顕在化したバグを抱えていてもそれには触れていない証明がなされているので、取り消しに伴う手続きをこと細かく定義する必要が無く、適格不明状態にもなりません。

もちろん、クロスチェックを含む構造設計ではそのための費用をご負担いただくことになりますが、認定プログラムによる確認申請では審査手数料の軽減もあります。当社は建材メーカーの協力を得てクロスチェック費用の軽減を図るポイント制度を今月中に導入します。

クロスチェックの義務化については、審査手数料や2本目プログラムの計算書の扱いなど制度運用の見直しが必要になりますが、一貫構造計算プログラムを使って安心安全な建物計画を進めるには現状、ベターな選択であると言えるでしょう。また、多くの賛同が得られれば可能であると考えています。

執筆者プロフィール

株式会社アークデータ研究所 代表取締役 一級建築士 吉沢俊正

吉沢俊正
株式会社アークデータ研究所 代表取締役 一級建築士
aspace@archdata.co.jp
1978年日本大学理工学研究科建築学専攻(坪井研究室、修士課程)終了。轄\造計画研究所(技士)、轄\造ソフト(常務取締役・開発本部長)の勤務を経て現在に至る。潟Aークデータ研究所 URL:http://www.archdata.co.jp/