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建設業での外国人材受入れを成功させる!
第2回 外国人が抱えている日本の建設業界のイメージは厳しい

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 前回の「第1回 建設業で従事可能な外国人材の『在留資格』は限定されている」で、約5.5万人の外国人が建設業に携わっていると説明いたしましたが、これから日本に入国してくる外国人や別の業種に従事している外国人からは、日本の建設業界はどのように見られているのでしょうか?

 今回は、外国人技能実習制度の事例を挙げさせていただきます。一昔前は、「日本に行けるのは素晴らしい」「日本で勉強できるのは替えがたい経験だ」という考えで、建設業の職種にも応募が殺到していましたが、現在は建設業における技能実習生数が増加し、良いイメージ以上にネガティブな情報も海外に出回り、国によっては募集をしても応募が少ない、もしくは「出稼ぎ労働」と考えている人材しか集まず、結局採用できないといったことが起こりつつあります。

 以下に、日本の建設業に対するネガティブな要素を紹介しています。あくまでも日本の建設業界を知らない外国人が持つイメージであることはご容赦ください。
 ただし、それぞれに対する対応策の事例は、日本人を採用する際と変わらないと思いますが、外国人の採用となった途端に頭から離れてしまうことが見受けられるので、ご留意いただけると幸いです。

1.安全面:2014年〜2016年度の3年間で、労災による技能実習生の死亡が22人といった報道が技能実習生の送出国で大きくクローズアップされるなど、死亡事故への意識は外国人の中でも高まっています。これに、竹などの木で組まれた足場が一般的で事故も日常茶飯事に起こるなどの送出国の環境が相まって、「とびは危ない」「高いところで作業をする職種は危険」「けがをして業務ができなくなると強制的に帰国させられてしまう」といったイメージを持たれており、いったん採用を決めても家族からの反対で辞退されることも起こっています。
 募集や採用面接の際に、いかに業界全体や受入企業側が安全に気を配っており、送出国の環境とは違っているかを、写真や動画を交えて詳細に説明することが重要です。

2.移動時間:業務現場が都度変更になることや、朝8時始業に対して朝5時に出発するなど遠い現場であっても移動時間に対して賃金が発生しない場合があることが敬遠されています。これは現在の技能実習の77職種(2018年9月末時点)の中では、特に建設業の職種とビルクリーニング職種に起こる問題であり、現場までの移動時間が2時間を超えた分は業務時間とみなすなど、一定の基準を設けて賃金を発生させることを推奨いたします。

3.作業環境:技術・技能が学べない(重いものを運ぶことが大半、など)、雨や酷寒猛暑でも外で作業をおこなう、といった環境が敬遠されています。実際の作業内容と応募時にイメージしていた作業内容に大きな隔たりがある場合に、大きなトラブルになりやすく、安全面と同様、募集及び採用面接時に、具体的にどういった作業をするのかについて、写真や動画を交えて詳細に説明することが重要です。

4.賃金形態:時給や日給月給といった、勤務時間や勤務日数によって月ごとに支払われる金額が異なる賃金形態は敬遠されています。毎月支払われる金額が決まっている月給を推奨いたします。

 一方で、賃金額が高い、実習指導員などの一緒に業務をする方々との距離が近い、忘年会や社員旅行などの社内イベントが多い、といったポジティブなイメージを持たれているのも事実です。募集をすれば集まるだろう、と安易に考えるのではなく、弱みに対してどのような施策をとり、強みをどのようにアピールすれば外国人にも来てもらえるかを深く検討することで、外国人採用を前向きに進められるのではないかと考えます。

執筆者プロフィール

株式会社ワールディング 代表取締役 谷口正俊

谷口正俊
株式会社ワールディング 代表取締役
1973年イタリア・ローマ生まれ。早稲田大学商学部卒業後、(株)ベネッセコーポレーション入社。同社退社後、2000年7月「教育を通じてより良い世の中へ」と、教育関連企業(株)ウィル・シードを共同創業、代表取締役副社長就任。大手企業400社の人財育成支援及び、全国の小中学校に新しいタイプの体感型教育プログラムを提供。同社副社長を退任後、2006年6月、(株)アクティブリッジの設立に参加。7年に亘るベトナム事業展開の後、2013年3月、(株)ワールディングを設立。日系企業のベトナム進出支援、ベトナム人材採用・育成事業を展開中。日本とベトナムを往復する日々を送っている。