建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

建設業での外国人材受入れを成功させる!
第4回 外国人材受け入れには、社内でのコンプライアンス遵守意識の浸透が必須

いいね ツイート
0

 前回は、外国人材を受入れるためには長期間がかかることと受入れのための手続きの流れを説明させていただきました。今回は外国人技能実習生を例に、外国人材を受入れるための要件を説明いたします。

 技能実習生を受入れるには、兎にも角にも法令等を徹底遵守することが必須となります。技能実習法に加えて、労働関係法令(労働基準法・施行規則、最低賃金法、労働安全衛生法・規則、労働契約法、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、職業安定法・施行規則、雇用対策法、事業附属寄宿舎規程、等)、出入国管理及び難民認定法・施行規則、住民基本台帳法、など、様々な法令等に則った事業運営が求められます。

 大企業であっても、これらの法令等に全て対応できているわけではなく、相当の経営者の覚悟が必要となります。かつては、違法行為や法令の拡大解釈・捻じ曲げによる技能実習生受入れもおこなわれていたと聞いていますが、今そのようなことをするのはリスク以外の何物でもありません。技能実習生を受入れるためには、コンプライアンス遵守の意識を社内に徹底することが重要となります。

 当社は、顧客のうち技能実習生の受入れを希望している会社に対して、54項目のチェックリストを用いて受入れ可否を判断していますが、これら全てをはじめから満たしていることは多くありません。逆に言えば、外国人の受入れを進めることにより、コンプライアンス遵守意識の浸透させることに繋がったという声も聞かれます。

 以下に、外国人受入れについての主要な受入要件をピックアップして記載させていただきます。

1.技能実習制度
@技能実習を行う予定の職種・作業の内容が、規定されている職種・作業と一致しているか。
→職種・作業ごとに、必須業務として規定されている「必須業務」を年の50%以上おこなうことが求められます。前提と異なっている作業をさせていた、という昨今のニュースはこれにあたります。
※技能実習受入れ後には、技能実習日誌、認定計画の履行状況に係る管理簿等の記録、保管が滞りなく行われるかが重要になります。

2.労務管理
@技能実習生も日本の労働関係法令等が適用されます。技能実習生を受入れていることにより、労基署の査察が入ることもあるかもしれません。労基署によって書類送検され、罰則を受けると5年間技能実習生の受入停止となります。労働者名簿・出勤簿・賃金台帳の法定三帳簿の保管は必須です。加えて、36協定(時間外労働・休日労働に関する協定届)、年間休日カレンダー、給与明細、場合によっては就業規則・賃金規程、賃金控除・口座振込の協定書、1年単位の変形労働時間制に関する協定書・協定届、寄宿舎規則等、定められている帳簿の提出・保管が必要になります。
A外国人を採用する際、不法就労者/不法滞在者でないことを確認する必要があります。偽造在留カード・偽造パスポートでだまされた企業が5年間の技能実習生受入停止になった事例があります。
B役員・従業員の社会保険加入はもちろん、年次有給休暇の付与・取得、雇入健診・定期健診・特殊健診の受診、雇入時の安全教育の実施、統括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任等が必要です。
Cその他、技能実習法、労働関係法令に違反していないか(二重契約、日本人との賃金差発生、賃金控除額違反、休日を取らせない、賃金不払い、過剰労働等)を、随時確認しなければなりません。

3.宿舎整備・人権保護
@技能実習法に定められている宿舎要件(寝室については床の間・押入を除き1人当たり4.5m2以上の確保、個人別の私有物収納設備、室面積の7分の1以上の有効採光面積を有する窓及び採暖の設備の設置、等)を満たす必要があります。
A技能実習生に対する人権侵害(暴行・脅迫・監禁・セクハラ・パワハラ等、罰金・違約金等、不当な財産管理、旅券・在留カードの不安、私生活の自由の不当制限等)がないように、会社全体で管理する必要があります。

 これらの他にも、技能実習生を受入れるには多くの項目をクリアする必要があります。特に労務管理については、「これまでは労基署から指導を受けたことがない」「日本人に対しても同じようにおこなっている」といった理由で違法行為や違法一歩手前の行為をおこなっていると、技能実習生を受入れてもすぐに受入停止となってしまいます。

 経営者だけでなく、現場の管理者・従業員がコンプライアンスを遵守する意識を持たなければ、外国人材の受入れは難しいといえるでしょう。

執筆者プロフィール

株式会社ワールディング 代表取締役 谷口正俊

谷口正俊
株式会社ワールディング 代表取締役
1973年イタリア・ローマ生まれ。早稲田大学商学部卒業後、(株)ベネッセコーポレーション入社。同社退社後、2000年7月「教育を通じてより良い世の中へ」と、教育関連企業(株)ウィル・シードを共同創業、代表取締役副社長就任。大手企業400社の人財育成支援及び、全国の小中学校に新しいタイプの体感型教育プログラムを提供。同社副社長を退任後、2006年6月、(株)アクティブリッジの設立に参加。7年に亘るベトナム事業展開の後、2013年3月、(株)ワールディングを設立。日系企業のベトナム進出支援、ベトナム人材採用・育成事業を展開中。日本とベトナムを往復する日々を送っている。