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建設業での外国人材受入れを成功させる!
第6回 外国人受入れ後に発生する建設業特有のトラブルA

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 今回は、労務管理面におけるトラブル事例について説明させていただきます。

 始業・終業や休憩時間に関する時間管理はトラブルの最たるものです。特に外国人技能実習生は、日本人従業員と同様に労働時間に対する賃金設定がされています。すなわち、業務請負の一人親方の方々とは契約形態が異なるということです。

 外国人技能実習制度上は、自社の従業員を技能実習指導員として選任し、その技能実習指導員と技能実習生がともに業務をおこなうことになっています。ただし、実態としては、一人親方に技能実習生を任せていることも少なくありません。この状態がそもそも制度違反であることはいうまでもありませんが、更に、一人親方の職人の方々と技能実習生の契約形態の違いにより、トラブルに発展することが多いです。

 技能実習生は、自身が勤務した時間分の賃金を受領したいという意識が強くありますが、この意識がない日本人が特殊で、日本以外の国の方々は技能実習生と同じであることを強く認識すべきです。つまり、一人親方の職人の方が仕事を早めるために休憩をとらず、それに実習生を付き合わせたりすると、技能実習生は早めた時間分の残業代を求めるということです。始業時間を早めた場合や終業時間を遅くした場合も同様です。自社の技能実習指導員と技能実習生が業務をおこなっている場合も、時間管理を徹底し、勤務した分を支払うことが重要となります。

 労務管理のトラブルは、他に有給管理と年末調整が挙げられます。
最近は年次有給休暇を付与しないといった会社はほとんどありませんが、月給制でなく日給月給や時間給を採用している会社は、有給の考え方がいまだに薄いことがあります。日本人従業員も取得していないからといった理由で、技能実習生の有給を認めないといったことは違法であることを認識する必要があります。また、今後は有給の取得を会社が管理することが義務化されるようになります。技能実習生が自分から取得しないために取得が義務づけられている有給日数が残ってしまわないような管理が必要です。

 また、日本は海外への送金により、所得税や住民税についての扶養控除が認められます。会社側で年末調整をおこなわなければ、外国人材は自身で有給を使い税務署にて還付手続きを実施せざるをえなくなります。そうなると会社に対する印象が悪化しかねません。

 これらのトラブルは、外国人に限ったことではありません。日本人に対しても同様のケアをおこなう必要があります。

 今後は、労務管理面でにおいて、これまでおこなっていた自社内の慣習や通例を見直し、それが本当にコンプライアンスに遵守しているものなのかを確認した上で、各種手続きやルールを定めることが重要と考えます。

執筆者プロフィール

株式会社ワールディング 代表取締役 谷口正俊

谷口正俊
株式会社ワールディング 代表取締役
1973年イタリア・ローマ生まれ。早稲田大学商学部卒業後、(株)ベネッセコーポレーション入社。同社退社後、2000年7月「教育を通じてより良い世の中へ」と、教育関連企業(株)ウィル・シードを共同創業、代表取締役副社長就任。大手企業400社の人財育成支援及び、全国の小中学校に新しいタイプの体感型教育プログラムを提供。同社副社長を退任後、2006年6月、(株)アクティブリッジの設立に参加。7年に亘るベトナム事業展開の後、2013年3月、(株)ワールディングを設立。日系企業のベトナム進出支援、ベトナム人材採用・育成事業を展開中。日本とベトナムを往復する日々を送っている。