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建設業での外国人材受入れを成功させる!
第8回 建設業における外国人受入れの拡大について

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 昨年から今年にかけ、日本国内の深刻な人手不足に伴う外国人材の受入れ拡大について、出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という)の改正をはじめとした受入れ制度改正が進められています。今回と次回では、新しい外国人材受入れ制度について説明させていただきます。

 外国人材の受入れ拡大については、以下のような経緯で進められています。

1.平成30年2月20日、内閣府の経済財政諮問会議で安倍首相が新たな外国人材受入れ制度の検討を指示。
2.平成30年2月23日〜4月12日、内閣官房や法務省を中心に「専門的・技術的分野における外国人材の受入れに関するタスクフォース」を設置し、新たな在留資格制度について検討。
3.平成30年6月9日、内閣府の経済財政諮問会議にて、法務省よりタスクフォースでとりまとめた内容を報告。
4.平成30年6月15日、「骨太の方針 2018」(経済財政運営と改革の基本方針 2018)が閣議決定され、新たな外国人材の受入れに関する事項が明記。
5.平成30年7月24日〜12月25日、骨太方針2018に基づき、法務省・内閣官房にて「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」が開催。
6.平成30年9月13日〜12月20日、新しい在留資格以外について議論するために、法務省にて「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策検討会」が開催。
7.平成30年12月8日、改正出入管法成立(在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設、出入国在留管理庁の設置等)。
8.平成30年12月25日、外国人労働者受け入れ拡大の新制度について、
・特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針
・特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(分野別運用方針)
・外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策
を閣議決定。
9.平成30年12月28日、法務省より新たな外国人材受入れに関する政省令のパブリックコメント募集開始(平成31年1月26日受付締切)。
10.平成31年4月1日、改正出入管法施行予定。

 外国人材受入れの制度改正の最大のポイントは在留資格「特定技能1号・2号」の創設です。第1回のコラムでも書きましたが、現在、現場作業が可能な在留資格は限られており、外国人が現場作業をおこなうには、身分に関する在留資格や留学・技能実習を保持していることが条件となっています。技術・人文知識・国際業務という在留資格もありますが、現場監督や設計業務は可能なものの、現場作業は許可されていません。加えて、学歴要件や実務経験要件がある点も受入が進まない要因となっていました。今回の制度改正には、学歴要件や実務経験要件を外し、かつ現場作業が可能な在留資格を創設することで、外国人材をより多く受入れようという意図があります(単純労働ではなく、あくまでも「現場作業」が解禁となるという表現が正しいです)。

 新たな在留資格「特定技能」には、以下の特徴があります。また、改正入管法施行後2年を目途として検討を加え、必要があれば見直しをおこなうことになっています。
1.建設業の受入れ対象分野
・11職種(型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、鉄筋継手、内装仕上げ/表装)
・全体では、特定技能1号は建設を含む14分野(建設業、造船・船用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気機器関連産業)、特定技能2号は建設を含む2分野(建設業、造船・船用工業)
2.受入れ対象者
・相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能1号」と、同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能2号」を新設する。
・ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有することが基本。
3.建設業における受入上限数
向こう5年間で最大4万人。
4.建設業における「特定技能1号」の技能水準・日本語水準
・技能水準は、「建設分野特定技能1号評価試験(仮)(平成31年度内に開始予定)」又は「技能検定3級」によって確認する。
・日本語能力水準は、「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」によって確認する(「建設分野特定技能1号評価試験(仮)」又は「技能検定3級」に合格していれば免除)。
・建設分野に関する技能実習2号を修了した者は、上記試験を免除する。
5.建設業における「特定技能2号」の技能水準・日本語水準
・技能水準は、「建設分野特定技能2号評価試験(仮)(平成33年度に開始予定)」又は「技能検定1級」によって確認する。
・実務経験として、建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験を要件とする。
・国内で試験を実施する場合、@退学・除籍処分となった留学生、A失踪した技能実習生、B在留資格「特定活動(難民認定申請)」により在留する者、C在留資格「技 能実習」による実習中の者については、当該試験の受験資格を認めない。
6.雇用形態
直接雇用のみ(派遣は不可)。
7.在留期間
・特定技能1号:通算で5年を上限
・特定技能2号:上限なし
8.家族の帯同
・特定技能1号:基本的に不可
・特定技能2号:可能
9.受入れ機関に対して特に課す条件
・外国人の受入れに関する建設業者団体に所属すること
・国交省が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと
・建設業法の許可を受けていること
・日本人と同等以上の報酬を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給を行う契約を締結していること
・雇用契約に係る重要事項について、母国語で書面を交付して説明すること
・受入れ建設企業単位での受入れ人数枠の設定
・報酬等を記載した「建設特定技能受入計画」について、国交省の認定を受けること
・国交省等により、認定を受けた「建設特定技能受入計画」を適正に履行していることの確認を受けること
・特定技能外国人を建設キャリアアップシステムに登録すること 
 等

 次回のコラムでは、特定技能と技能実習の違い、考えうる特定技能外国人の受入メリットとデメリット、留意事項等を説明させていただきます。

執筆者プロフィール

株式会社ワールディング 代表取締役 谷口正俊

谷口正俊
株式会社ワールディング 代表取締役
1973年イタリア・ローマ生まれ。早稲田大学商学部卒業後、(株)ベネッセコーポレーション入社。同社退社後、2000年7月「教育を通じてより良い世の中へ」と、教育関連企業(株)ウィル・シードを共同創業、代表取締役副社長就任。大手企業400社の人財育成支援及び、全国の小中学校に新しいタイプの体感型教育プログラムを提供。同社副社長を退任後、2006年6月、(株)アクティブリッジの設立に参加。7年に亘るベトナム事業展開の後、2013年3月、(株)ワールディングを設立。日系企業のベトナム進出支援、ベトナム人材採用・育成事業を展開中。日本とベトナムを往復する日々を送っている。