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ZEBプランナー体験記
第4回 オーナー・事業者を説得するには

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 25兆円。この数字は2018年度に世界で発生した自然災害による経済損失額です。台風や大雨などの気象災害が96パーセントを占め、個別の災害では、日本の9月の台風21号の損失額が4位、7月の西日本豪雨が5位でした。

 このデータからも近年の企業リスクの最上位は、気候変動リスクと考えられており、企業は、当該リスクへの対策として、脱炭素社会を目標にしていくでしょう。

 そんな時代背景にあって、自社の事業活動で使用する電力を100パーセント再生可能エネルギーとする取り組みである「RE100」が注目されてきています。加盟企業は、GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)、BMWなど欧米のリーディング企業が参加し世界で160社、うち日本は13社(19年1月現在)で構成されています。

 また、国連で15年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」への取組が、企業価値向上につながり、財務情報だけを重視する投資から、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3つの観点ESGが、企業の長期的な成長には必要との機関投資家の投資判断基準ともなってきています。

 オーナー・事業者にZEBをアプローチしていくには、省エネによる光熱費の削減のほか、太陽光等の発電設備や蓄電池との組合せによる災害時の事業継続性と、それに伴う不動産価値の向上、また適切な空調設計による室内環境に対する満足度の向上と、それに伴う執務者の知的生産性向上、あるいはそれらを総合した環境教育への活用など様々な角度からアプローチできます。咀嚼して申しあげますと、適切な省エネ設計は、初期投資は増加しますが、夏涼しく・冬暖かい室内環境を無駄なく実現でき、投資に見合うだけの光熱費の削減・社会的意義に伴う宣伝効果・不動産価値の向上によるブランドイメージなどが差別化できます。

 環境共創イニシアチブ(SII)は、ZEBを推進するオーナーに「ZEBリーディング・オーナー制度」を設け、先導的建築物に取組んでいることを公表し、国は登録された情報を基にZEBの普及に向けてさらなる施策を検討していくとしています。

 最終的にオーナー・事業者にZEB取組を説得していくには、提案側がZEB建築物に心からオーナー・事業者にとって良いことであるとの信念を持つことが大事だと思います。

 時代をリードするこの機会を得られることは、やりがいもあります。

執筆者プロフィール

株式会社イエタス(千代田区) 営業本部 部長 西山 博(にしやま ひろし)

西山 博(にしやま ひろし)
株式会社イエタス(千代田区) 営業本部 部長
建築建材商社に13年間勤務した後、2007年から住宅性能評価(品確法)に特化した一級建築士事務所イエタスに勤務。主に、戸建て住宅の品質向上に努めてきた。当時住宅市場は「量」から「質」へと大きな転換期で、積極的に情報発信しながら、地域の工務店からの相談に数多く対応。 コンサルティング的な依頼も増えていく中、非住宅建築物の省エネルギーの届け出業務を行う非住宅部門を4年前に設立。4年間で省エネ届出の実績は1000棟を超える。2年前にZEBプランナーにも登録。11件のZEB案件に携わり、ZEBへの想いは熱い。現在、高層マンションのZEHにも取組んでおり、幅広く省エネに貢献出来きることを楽しんで毎日仕事をしている。 モットーは「住まう人の住宅、集う人の建築物の安心・安全・快適を実現する」を掲げ、みらいの子供たちの為に残せる住宅・建築物の省エネに貢献することを目指す。 株式会社イエタスホームページURL:http://yetus.co.jp/ お問い合わせ先 電話 03-3230-1215 ZEB担当者 まで