建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

ZEBプランナー体験記
第6回 ZEB化が難しい建築用途は?

いいね ツイート
0

 ZEBを計画する際の基本イメージは、パッシブデザイン(自然エネルギー利用)・アクティブデザイン(高効率設備再生可能エネルギー)・エネルギーマネジメント(BEMS)の3つです。

 各用途でZEB化していく際のポイントを述べますと、用途ごとに異なるエネルギー消費傾向を把握し、どの設備でエネルギー消費量を減らすことが、建物全体のエネルギー消費量を減らす上で効果的であるかを考えることが大切です。

 用途を問わず、一般的にエネルギー消費が大きな設備は空調と照明で、空調は5割から6割、照明は2割から3割と全体のエネルギー消費の約7割から8割を占めます。

 さて、現状の非住宅に係る省エネ基準に基づく計算値を簡単に向上させる方法は、先ず外皮対策については庇などの日射熱対策を行うことです。断熱性能向上と考える方も多いと思いますが、暖房エネルギー消費量が支配的な住宅と異なり、冷房エネルギー消費量の多い非住宅の場合、夜間のOA機器等による内部発熱を、外気に放出し難くなるため増エネとなる可能性もあり、慎重な計画が必要となります。
 
 次に設備対策としては、第一に過剰設計は避けるということです。空調を例にすると、負荷に応じた適正な能力の機器選定を行い、その上で負荷に応じた運転を可能とするための各種制御や熱源の複数化(台数制御)などを行い、より高い省エネ性能を目指すこととなります。また、照明であれば、想定する必要照度を確保した上、在室時間帯で制御するシステム、タスクアンビエント照明などを配置し、省エネ性能の向上を図ります。当然各設備機器とも高効率機器の選定が望ましいですが、コストバランスを初期段階で把握することも忘れてはならないことです。

 ただし、これらの工夫を行っても、ZEB化の難しい用途等も存在します。例えば学校などは元々の単位床面積当たりのエネルギー消費量が他用途と比較して小さい(基準値も小さい)ので、これら工夫を行っても省エネ計算上の数値として効果が出難い用途と言えます。

 ZEBという便宜上一定の数字的な閾値の設けられた用語にとらわれず、忘れてはならないのは、そこに集う方の快適性を実際に実現した上で、エネルギー消費の削減を実施することが重要です。その為には、エネルギー消費の計算上見込めない、窓開けによる空調エネルギーの削減や、休憩時間中の消灯など、古典的な取り組みも大事なことです。

執筆者プロフィール

株式会社イエタス(千代田区) 営業本部 部長 西山 博(にしやま ひろし)

西山 博(にしやま ひろし)
株式会社イエタス(千代田区) 営業本部 部長
建築建材商社に13年間勤務した後、2007年から住宅性能評価(品確法)に特化した一級建築士事務所イエタスに勤務。主に、戸建て住宅の品質向上に努めてきた。当時住宅市場は「量」から「質」へと大きな転換期で、積極的に情報発信しながら、地域の工務店からの相談に数多く対応。 コンサルティング的な依頼も増えていく中、非住宅建築物の省エネルギーの届け出業務を行う非住宅部門を4年前に設立。4年間で省エネ届出の実績は1000棟を超える。2年前にZEBプランナーにも登録。11件のZEB案件に携わり、ZEBへの想いは熱い。現在、高層マンションのZEHにも取組んでおり、幅広く省エネに貢献出来きることを楽しんで毎日仕事をしている。 モットーは「住まう人の住宅、集う人の建築物の安心・安全・快適を実現する」を掲げ、みらいの子供たちの為に残せる住宅・建築物の省エネに貢献することを目指す。 株式会社イエタスホームページURL:http://yetus.co.jp/ お問い合わせ先 電話 03-3230-1215 ZEB担当者 まで