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ZEBプランナー体験記
第7回 ZEB取組失敗例とは?

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 ZEBを検討していく中で、一度や二度苦い経験をされた方がおられるのではないでしょうか。

 ZEBの実現には、基準上の要件として目指すZEBのランク、建築物の用途、建設地の地域の区分等を考慮した上、さらに実務上の要件として、予算、工期、新築・既存の別などを考慮することが必要となります。

 一般的にZEB化の実現が難しくなるケースとしては、ZEB化への急な計画策定に伴う、オーナー・事業者と請負業者との打ち合わせ時間が十分にない状態での実施など、準備不足があげられます。

 第3回のコラムで紹介したとおり、ZEBを実現していく為に最も大事なことは、「何の為にZEBに取り組むのか」について、関係者一同が共通理解を持つことです。オーナー・事業者からの意向が示されたとき、何故ZEBに取組むのかが曖昧なまま進みますと、無駄に初期コストが高くなるなど、計画する上での障害になってしまいます。
 
 もちろん、一部の設備は一般建築物と比較して初期コスト高となることはやむを得ないと思いますが、省エネも含めたZEB化のメリットを理解して頂いた上で取り組むことをおすすめします。特に、執務環境の向上に資する空調や照明設備に関しては、省エネ効果も大きいため、最初の検討項目としては適していると考えられます。

 その際、ZEBロードマップフォローアップ委員会が発行している各用途別の「ZEB設計ガイドライン」を活用し、検討していくことも効果的です。当該ガイドラインでは、事例をもとに、どの設備がどの程度省エネ効果があるのかや、その概算費用の例を示してありますので、執務環境向上も視野に入れつつ、省エネ計画案の策定に有効な資料と言えます。

 例えば照明設備においては、先ず基本的な用途等も踏まえた適正照度の検討(過剰照明の防止)を行います。次に、適正照度を賄うのに必要となる機器の選定を行いますが、省エネ化に取り組むのであれば、ここで高効率照明器具の選択を行うことになります。さらに省エネを進めるのであれば、利用者の業務形態等を踏まえ、執務環境を損なうことなく、無駄な点灯時間(消費エネルギーの増加)を減らすための制御などを組み合わせることとなります。これら一連の検討工程を省き、単に高効率照明器具等を導入した場合、最適な省エネ提案とはならず、失敗と判断される可能性すらあります。

 ZEBの取り組みに失敗しない為には、実際にZEBに取り組んだ実例の見学やオーナーの話を聞くことも重要だと思います。そして得た情報を元に、自らのZEB化に向けた取り組みをいつから開始するか、時間が無いのであれば、当該検討に対応できる実務作業のアウトソーシング先の検討なども必要となります。いずれにしても、百聞は一見に如かず。設備機器の検討や更新は、必ずどこかの段階で実施されることになりますので、先ずは失敗を恐れず取り組むことが、最初の一歩になると思います。

執筆者プロフィール

株式会社イエタス(千代田区) 営業本部 部長 西山 博(にしやま ひろし)

西山 博(にしやま ひろし)
株式会社イエタス(千代田区) 営業本部 部長
建築建材商社に13年間勤務した後、2007年から住宅性能評価(品確法)に特化した一級建築士事務所イエタスに勤務。主に、戸建て住宅の品質向上に努めてきた。当時住宅市場は「量」から「質」へと大きな転換期で、積極的に情報発信しながら、地域の工務店からの相談に数多く対応。 コンサルティング的な依頼も増えていく中、非住宅建築物の省エネルギーの届け出業務を行う非住宅部門を4年前に設立。4年間で省エネ届出の実績は1000棟を超える。2年前にZEBプランナーにも登録。11件のZEB案件に携わり、ZEBへの想いは熱い。現在、高層マンションのZEHにも取組んでおり、幅広く省エネに貢献出来きることを楽しんで毎日仕事をしている。 モットーは「住まう人の住宅、集う人の建築物の安心・安全・快適を実現する」を掲げ、みらいの子供たちの為に残せる住宅・建築物の省エネに貢献することを目指す。 株式会社イエタスホームページURL:http://yetus.co.jp/ お問い合わせ先 電話 03-3230-1215 ZEB担当者 まで