建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

選ばれる建設会社になるための労務管理
第3回 建設業における労働時間対策への取り組み@

いいね ツイート
0

 2019年4月より、順次働き方改革関連法が適用され、建設業においても、年5日の有給休暇の取得義務への対応に加え、2024年4月からはこれまで適用を除外されていた時間外労働の上限規制の適用も予定されており、長時間労働の是正は避けられない課題となっています。それでは建設業における労働時間対策はどのような取り組みが必要なのでしょうか。主に「労働時間短縮への取り組み」「休日・有給休暇の取得推進」「生産性向上への取り組み」の3点を実施する必要があります。

 それでは、まず「労働時間短縮への取り組み」についてみていきましょう。労働時間を短縮するために効果的な下記3つの制度をご紹介します。

(1)1年単位の変形労働時間制の導入
【概要】
 労使協定を労働基準監督署長に届け出ることにより、1年以内の一定期間を平均し1週間の労働時間を40時間以下の範囲以内にした場合、特定の日や週について1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度のこと。
【導入方法】
・就業規則への規定
・労使協定書の締結
・1年単位の変形労働時間制に関する労使協定届の作成、労働基準監督署への提出

 1年単位の変形労働時間制の導入は、繁忙期に長い労働時間を設定し、閑散期に短い労働時間を設定することにより、効率的に労働時間を配分して年間の総労働時間を短縮することができるというメリットがあります。実際に繁忙期以外の土曜日に所定休日を増やして年間における休日の確保を図ることができたという事例があります。


(2)残業の事前申請制の導入
【概要】
 各従業員から、事前に残業発生を予測させ、予め申請された時間に対して会社が承認し、業務命令として残業をさせるという流れで残業を行う制度のこと。
【導入方法】
・就業規則への規定

 残業の事前申請制の導入は、事前申請を行うことで、無駄な残業やダラダラ残業を防ぐ効果があり、例えば残業を実施する場合は事前に担当上司に残業申請書を提出し、全役員の決済により許可することで、勤務時間内での業務の効率化につながったという事例があります。 


(3)ノー残業デーの導入
【概要】
 残業をしないで定時に退社することを従業員に促す取り組みのこと。
【導入方法】
・就業規則への規定
(規定をせずに運用として社内へ周知して実施することでも可能)

 ノー残業デーの導入は、時間を延長できないことで、従業員の業務に対する時間と効率への意識向上を促すことが可能となり、社内での従業員への周知の徹底に加えて、社外取引先へのアピールを行うことで、残業を行わない環境を作ることが可能となります。

 次回は、引き続き、「労働時間対策」のうち、「休日・有給休暇の取得推進」を取り上げます。

執筆者プロフィール

株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士 吉川 直子

吉川 直子
株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士
社会保険労務士/(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。大学卒業後、アパレルメーカー、労働保険事務組合、社会保険労務士事務所等に勤務後2005年に社会保険労務士として独立。人材育成への関心からコーチングのトレーニングを2003年より開始し、プロコーチとしても活動する。その後コーチング事業を法人化し、2011年株式会社シエーナを設立。現在は、企業向けコーチング、企業研修、人事評価制度の構築、就業規則の作成、人事労務相談等を中心に活動中。プライベートでは1児の母。建設業向けの各種事業主団体や商工会議所等の講演、企業研修の実績多数。著書に「社会保険・労働保険手続きインデックス(税務研究会出版局)」「中小会社の人事・労務・人材活用図解マニュアル(大泉書店)」 「人ひとり雇うときに読む本(中経出版)」などがある。https://sce-na.com/(株式会社シエーナ ホームページ) https://sce-na.net/(社会保険労務士シエーナ ホームページ) https://kensetsu-jinzai.com/(建設業様向けホームページ)