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選ばれる建設会社になるための労務管理
第5回 建設業における労働時間対策への取り組みB

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 今回は、建設業における「労働時間対策」のうち「生産性向上への取り組み」について取り上げます。労働時間を短縮しつつ成果を上げるためには、生産性を向上させなければなりません。ここでは生産性向上のための取り組みとして、「(1)人材育成」「(2)IT化」「(3)業務改善」についてご紹介します。

(1)人材育成
 人材育成と人材定着は、生産性を向上させるための最も効率的で必要不可欠な方法です。例えば資格取得者が多く、勤続年数が長い従業員が定着していることが、対外的な信用力アップになり、仕事量も増え、業績も上がったという事例があります。また、属人的な仕事をできるだけ減らすためにマルチタスク人材を育成し、特定の従業員しかわからない状態を防ぐことで、有給休暇を取りやすい環境整備につながった、という事例があります。

(2)IT化
 自動電源オフソフトや勤怠管理システムの導入など、IT化により生産性が向上します。例えば次のような事例があります。

@自動電源オフソフトの導入
 事前の申請や承認がない状態で所定労働時間を過ぎると、一定時間を経過したところで自動的にパソコンがOFFになるソフトを導入し、早帰りと残業削減の意識づけを徹底している。
A現場へのパソコン支給
 現場の従業員にもパソコンを支給し、情報共有ができることで指示のタイムラグが減り、労働時間短縮を行っている。
B勤怠管理システムの導入
 勤怠管理システムを導入したことで、日頃から労働時間を管理することが可能となり、各部署に指導できるようにデータ管理を行うことで無駄な労働時間を削減している。

(3) 業務改善
 上司のマネジメント力の向上や、業務量の平準化などにより、生産性を向上させることが可能となります。

@上司のマネジメント力の改善
 現場への直行直帰を禁止し、従来の現場まかせの時間管理から、本社が労働時間を把握する体制に切り替え、1週間ごとに残業時間を集計。上司が部下の残業状況を随時把握して、早期に仕事配分などを調整している。
A業務のマニュアル化、業務量の平準化
 所定外労働発生の原因を分析し、業務のマニュアル化、業務量の平準化、職種ごとの働き方の見直しを推進している。
B現場支援の体制整備
 部署長・安全管理担当者・総務が連携をとり、女性の現場支援担当者を育成し特定の従業員が過重労働にならないような現場支援体制を構築。女性事務員も現場へ支援に行くような体制を整備したことで、女性のスキルアップにもつながっている。

 次回からは、建設業における「人手不足対策」について取り上げて参ります。

※各事例は厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」の働き方改革取組・参考事例一覧より一部抜粋

執筆者プロフィール

株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士 吉川 直子

吉川 直子
株式会社シエーナ代表取締役/社会保険労務士
社会保険労務士/(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。大学卒業後、アパレルメーカー、労働保険事務組合、社会保険労務士事務所等に勤務後2005年に社会保険労務士として独立。人材育成への関心からコーチングのトレーニングを2003年より開始し、プロコーチとしても活動する。その後コーチング事業を法人化し、2011年株式会社シエーナを設立。現在は、企業向けコーチング、企業研修、人事評価制度の構築、就業規則の作成、人事労務相談等を中心に活動中。プライベートでは1児の母。建設業向けの各種事業主団体や商工会議所等の講演、企業研修の実績多数。著書に「社会保険・労働保険手続きインデックス(税務研究会出版局)」「中小会社の人事・労務・人材活用図解マニュアル(大泉書店)」 「人ひとり雇うときに読む本(中経出版)」などがある。https://sce-na.com/(株式会社シエーナ ホームページ) https://sce-na.net/(社会保険労務士シエーナ ホームページ) https://kensetsu-jinzai.com/(建設業様向けホームページ)