建通新聞社

建設ニュース、入札情報の建通新聞。[建設専門紙]

「中小建設業の事業再生の考え方・進め方」 第3回 ことばの定義その3

いいね ツイート
0

本シリーズも、はや3回目。
今回は「事業再生」と一般的に呼ばれているものの内容を少しお話しして、「ことばの定義」のまとめとします。

初回では「事業再生」と「企業再生」の違いに触れましたが、実務においてはあまりその違いを意識していないのが一般的です。
なぜなら、「再生対象たる事業を救う」という前提の中で、「企業そのものを残すか否か」などはあまり大きな意味がないからです。

このことをもう少し掘り下げると、「『バランスシート対策』はどうにでもなる」ということに行き着きます。
ちょっとややこしい話になりますが、「事業」を本当に再生させるために必要なことは、バランスシート等の静態的要件よりも、「事業性そのものという動態的要件の方が重要である」ということがこのことから言えるわけです。

しかしながら一般的に「事業再生」という言葉から連想されるものは、どちらかというと「バランスシート対策」、すなわち借金を圧縮したり、バランスシート上の「重荷」を事業から切り分けたり、といった諸策の方が強いように思われます。
なぜなら、過去においては、いわゆる「バブル後遺症」により、「事業はそこそこうまく回っているのに、過去の負の遺産が大きすぎてなかなか健全企業とみなされずに停滞している」という企業が多かったからです。そういう状況を打開すべく、「私的整理のガイドライン」が整備されたり、「産業再生機構」が設立されたりと、私的手続きの中で「負の遺産」を解消する手法が次々と整備されていった経緯がありました。

ところが、昨今の「再生現場」においては、単にバランスシート対策を講じただけではどうにもならない重症患者が後を絶ちません。
特に建設業においては顕著なのですが、要は外部環境が非常に厳しい状況の中、たとえ「借金がゼロ」であってもやっていけないケースが多々あるからです。

したがって、元に戻りますと、真に事業を再生させるためには、バランスシートという過去の成績の結果よりも、今後の収益性=損益計画の健全化が重要であり、そういう意味で「会社というハコ」をどうしようが、あまりそこには重要性がなく、よって「企業再生」だろうが「事業再生」だろうが関係ない、ということになるわけです。

今回はちょっとややこしかったでしょうか?
ではまた次号で!

大熊康丈(中小企業診断士)
 http://www.admin.vc

執筆者プロフィール

中小企業診断士 大熊康丈