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ZEH−マンションコンサル体験記
第3回 マンションデベロッパーを説得するには

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ZEHマンションに取り組むよう、マンションデベロッパーを説得するには、どのようにすれば良いのか―。

そもそも、デベロッパーにとってZEHマンションに取り組むことのメリットは何でしょうか。私が関わっているデベロッパーの意向をまとめると、まずはSDGsへの具体的行動が挙げられます。また、今のところはマンション販売の差別化に「省エネ」を上げたことがないが、今後の改正省エネに伴う「省エネ性能の説明義務化」への先行投資などとして取り組むこともあるようです。2021年4月から施行予定の「省エネ性能の説明義務化」への対応は、今計画している案件は対象外としても、法律上の対象時期を鑑みますと、今後の計画案件については対応を考えなければなりません。

ZEHマンション建築に際してデベロッパーが不安に思うことは、@工期が間に合うのかAコストが合うのか、B補助金が本当にもらえるのかの3点です。これらに対し、根拠をもって答えることが、説得への近道です。

まず、@は、タワーマンションか、高層マンションか、中低層かなどのマンションの規模をはじめ、住戸数、建設地を確認します。その上で、施工上のスケジュールと補助事業をスケジュール見比べ、間に合うのかを判断します。

Aは基本仕様からZEHマンションにする場合の仕様変更内容を明示します。この際、参考物件をいただいて試算することになります。デベロッパーにとってコストが重要なのは当然ですが、私の経験上、はじめにコストを意識しすぎてしまうと、計画途中に人件費や材料費などが予想を超えて高騰した場合に、ZEHへの取り組みに急ブレーキが掛かります。デベロッパーと話をする際には冷静にコスト分析する必要性を伝え、正確なコスト上昇分をしっかり把握することが大事です。Bについては、ZEH化にはコストアップになってしまうため、どうしても補助金を利用していくことが収益性を含め条件となってきます。しかし、採択されるかの保証がないまま取り組むには、冷静なコスト分析が必要不可欠となります。

さて、ここで11階建て100戸の分譲マンション案件の取組事例をご紹介します。

高層マンション100戸程度、二重床の案件であれば、着工予定の4カ月前から取り組めば間に合います。

その上でコストを把握するため、不利側住戸(熱の損失が大きい角部屋・開口部が多い住戸)を選定し試算します。

試算結果を基にコストをはじき出し、営業・販売方針・施工・設計それぞれの立場から意見交換をします。ここでもう一つ重要な観点は、他社の動向と国の方針を知ることです。

国交省は2017年に集合住宅のZEHロードマップを策定し補助事業を始め、19年からは超高層マンションにも補助が拡大されました。なぜ国はマンションをZEH化するために補助金を出すのか?の社会的背景を知り取り組むべきかの検討をしっかり行うことも肝要です。

判断する際の他社動向ですが、高層マンションの補助事業は2年目で、延べ41件の採択事例があります。その内容も参考にします。

他社はどの様な判断で実施しているのか、多棟数で採択されているデベロッパーは何を狙ってZEHマンションに取り組んでいるのか?などの情報収集することは、自社の取り組みの判断材料となるでしょう。

最後にZEHマンション取り組みのポイントは「道先案内人」を見つけることでもあります。コスト上昇になるマンションのZEH化をデベロッパーに勧め、説得するには、経験のあるサポート役「道先案内人」ができる会社との協力が必要です。成功例も失敗談も豊富な経験のある会社を入れておくことで、とても効率的に進められます。

執筆者プロフィール

株式会社イエタス営業本部部長 西山 博(にしやま ひろし)

西山 博(にしやま ひろし)
株式会社イエタス営業本部部長
建築建材商社に13年間勤務した後、2007年から住宅性能評価(品確法)に特化した一級建築士事務所イエタスに勤務。17年にZEBプランナーに登録、29件のZEB案件に携わる。ZEH(またはZEH−M)については、低層10件、中層8件、高層5件、超高層1件。 モットーに「住まう人、集う人の住宅建築物の安心・安全・快適を実現する」を掲げ、未来の子供たちのために残せる住宅・建築物の省エネへの貢献を目指す。