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電子納品から始める建設IT 第4回 日常業務でも電子納品を意識する(その2)

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 前回は、「フォルダの管理とデータの活用を妨げない、誰でも利用できるデータ作成が必要である」ことを解説しました。では具体的には、どのようにすれば、これらのルールを身につけることができるのでしょうか。
 答えは簡単です。それは「電子納品を意識すること」です。実は電子納品の基準は、単に成果品に対しての決めごとではなく、工事中に作成される書類や業務で利用する書類を、「将来活用できるデータとして作成するためのルール」として位置付けられているからです。

 たとえば、設計の報告書については、書類を作成したオリジナルのファイルとPDFのファイルを両方納めるように規定しています。
 これは、PDFファイルがあることにより、誰でも閲覧ができ、一方で必要なときにはオリジナルファイルを利用して数値や文章などを取得できるようにするためです。
 印刷された書類を単にスキャンしてPDFにしただけでも、電子データとなっていますし、省資源・省スペースが図れます。ただし、その情報を加工することができません。
 EXCELやWORDなどで作成した書類を印刷し、FAXで送付している方がいますが、この場合には受け手の方で加工ができません。この書類をメールに添付して送信しなければ、その後の利用に影響がある、ということと同じです。
 また、印刷してからスキャンしたPDFファイルをメールに添付している人もいます。確かにFAXよりは電子化されていますが、文字は画像として捉えられてしまうため、実はこれも利用しにくいデータなのです。
 PDFに関して最も良い方法は、無償のAcrobat Readerではできませんが、有償のAcrobatを購入し、WORDなどで作成したデータを直接PDFに変換することです。これにより、文字はTEXTデータとして貼り付けられますし、表の場合は、EXCELなどに表として貼り付けることも可能になります。一見同じPDFですが、まさに活用が可能なデータになるのです。
「なぜ自分だけが、後に利用する人のことを考えて購入しなければならないか」などと考えるべきではありません。自分もどこかで「後の人」になり得るわけですから、みんなが後の人のことを考えると、自然と自分にも回って来て活用できるからです。

 本題に戻りますが、電子納品では、このPDFに関しての注意事項も記述されていますので注意も必要です。
カタログなどの紙の書類なども、スキャニングしPDFにすることで対応できます。ただし、記録として残すのには良い方法ですが、活用には至らないこともあるので、無理にスキャンするのではなく、協議をすることになっています。
 さらに重要なこととして、PDFはデータであるため、加工をすることが可能です。押印した書類のPDF化は、原本でない可能性があり、現在時点では正式書類とは認めていません。電子化せずに、今まで通り「紙」で提出することになっています。
 IT化とは、「データにする目的を考えながら進めないと意味がない」ということがわかっていただけたでしょうか。日常業務で注意すべき点を理解し、そういった目線で電子納品の基準を見ると、また一歩、建設ITへと近づけるのです。

みんなで作る電子納品に安心して対応できるサイト「みんなの電子納品」 http://m-cals.jp
(管理者 株式会社デバイスワークス 加賀屋太郎)

執筆者プロフィール

株式会社デバイスワークス 加賀屋太郎