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「中小建設業の事業再生の考え方・進め方」 第5回 事業再生の中身2

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今回は「旬」の話題から。(配信されるころには旬を過ぎているかもしれませんが・・・)
米国「ビック3」のGM社が、同じく「ビック3」のクライスラーに続き、「米連邦破産法11条」の適用申請を行いました。
この「米連邦破産法11条」、我々の世界では「チャプター11(イレブン)」という名でおなじみなものですが、要は日本でいうところの民事再生法です。

この事件に関し、米国大統領からの「早期再生に自信あり」みたいなコメントがメディア上をめぐっていますが、ここでいう「再生」は、前号でいうところの「バランスシートの改善」のことでして、それも「ハイテク」を駆使した大掛かりな「外科手術」となります。

なぜ「ハイテク」かというと、俗に「プレパッケージ型」と呼ばれる「事前に再生スキームを立案し」かつ「事前に主要債権者の同意を取り付ける」手法をとっているからです。
そしてそこでの「再生スキーム」はスポンサーが介在することが一般的です。
(そのため、「プレパッケージ型」というと、事前にスポンサーを用意しておいた上で民事再生等の法的整理を申し立てることを意味することも多いのですが、本来的には前述のとおり、事前に主要債権者の同意を取り付けておくことが重要となります)

法的整理を申請する前に「法的整理を申請します」なんて宣言したら、普通は取り立て騒ぎで大変になるだろう、と思ってしまいますが、ここまで大きな会社となりますと、下手に「取り立て」に走れば、債権者の被害も大きくなってしまうので、ひとまず方針に耳を傾ける意味が出てくるので、こういう方法が成り立つわけです。

具体的な進め方としては
・金融面、事業面両面でのスポンサー(支援者)を内定しておく
・そのスポンサーの意向を踏まえた「再生計画」を立案する
・その計画をもって、主要債権者と交渉する
・交渉が成立したら「法的整理」を申請する
・申請されたら、できるだけ早く法律に従い、金融面のスポンサーによる資金提供→一定額の弁済→債権放棄といった具体的手続きを進める
・この結果、バランスシートは一気に改善、あとは事業面のスポンサーのもと、「商売の改善」を進めていく
といった流れになります。

ちなみにGM社の場合における「金融スポンサー」候補は「米財務省」、すなわち国有化路線が有力と報じられています。

また、日本における「スポンサーが介在する法的整理」の事例の多くの場合、簿外債務処理の問題や税務上の問題から、受け皿会社へ事業を譲渡する方法(第2回「第二会社方式」参照)をとることが多数です。

というわけで、今回は「旬のニュース」から、「事業再生の中身」として、「法的整理を活用した事業再生」について触れてみました。

では、また次号で!


大熊康丈(行政書士/中小企業診断士)
http://www.admin.vc

執筆者プロフィール

中小企業診断士 大熊康丈