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海釣りから建設業の戦略的マーケティングを考える(5)

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 マーケティング戦略立案において、ターゲット設定の次に行うのはポジショニングである。ポジショニングとは、市場においての立ち位置を決めることである。言い換えると、顧客のニーズを見定めながら、他社との競争から優位に立つためのコンセプトを定めることと言えよう。
 ポジショニングの好事例として、釣り餌メーカー・マルキユーの例を挙げてみよう。釣具業界は、シマノ・ダイワという2大メーカーが激しく競い、その下に中堅メーカーがひしめき合っている状況である。そのような中、マルキユーは創業からの経緯もあり、釣り餌に特化し、釣り人のニーズの変化や技術革新をタイムリーに取り込んだユニークな釣り餌で他社と差別化するというポジショニングを取っている。釣具メーカーは竿、リール、仕掛けなど、製品カテゴリーを拡大する戦略が多いのに対し、珍しいケースである。
 釣具店に行くと、実に多種多少なマルキユーの釣餌に驚かされる。魚種や釣り方に応じて、数百種類の釣り餌をラインアップしているのだ。このようにマルキユーは、言うなれば「釣り餌のスペシャリスト」として、釣具業界で確固たるポジショニングを築いているのである。ポジショニングとは、このようにターゲットとする市場でどのように戦っていくのか、立ち位置を定めることである。
 さて、実際の釣りにおいては、ポジショニングは、事前に収集した釣れ行きの傾向などから、どのように釣りをしていくのか、イメージをしていくことに例えられよう。釣果情報や釣り動画、船宿からの情報により、釣れている釣り方の情報を収集し、実際の釣りのイメージを決めていくことである。カワハギであれば、先調子の竿で底を叩いていくのか、少しだけ胴よりの先調子の竿で宙釣りしていくのか、などを決めるようなものである。
 ターゲット設定とポジショニングが終わったら、目標設定とマーケティングミックスの検討に入っていく。

執筆者プロフィール

齋藤昭彦

齋藤昭彦
株式会社日本コンサルタントグループ 建設産業研究所 経営コンサルタント 齋藤 昭彦  学卒後、株式会社内田洋行入社。首都圏第2営業部にて公共・大学営業担当、のち金融営業部にてメガバンク営業担当。2014年公益財団法人さいたま市産業創造財団へ入職。創業・経営改善支援担当、医療・国際展開支援担当、オープンイノベーション推進チームリーダーなどを経て日本コンサルタントグループ入社、現在に至る。