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「中小建設業の事業再生の考え方・進め方」 第6回 事業再生の中身3

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6回目の連載となりました。
いまいちど「バランスシートの改善」についてまとめてみます。
バランスシートの改善については、以下のパターンで整理することができます。
1.遊休資産の売却等による借入金の削減
2.債務整理による債務の圧縮(カット)
 (1)法的整理(民事再生、会社更生等)
 (2)私的整理(金融機関による債権放棄や廉価での債権売却等)
3.第三者への経営権譲渡による抜本改善
 (1)債務整理を併用したM&A(買収及び合併)
 (2)「負の遺産」を置き去りにした事業譲渡(「第二会社方式」)

「1」くらいですむ場合には、主力金融機関ともよく協議を進めながら行えば、それほど大きな問題もなく進められます。ただし、いまどきの「厳しい会社」は多くの場合、借入金過多や事実上の債務超過に悩まされていますので「2」や「3」が必要になってきます。
その中でもとりわけよく利用されるのが第2回で深堀りした3−(2)「第二会社方式」となるわけです。
これを採用した場合、「いいとこどり」した新会社がリセットして再出発しますので、バランスシートは劇的に改善されるのです。(というより、過去を引きずりません)

しかし、いくらそのような手法を用いて、バランスシートを改善しても、収益力=「商売そのものの力」が落ち込んだままでは、再び「厳しい会社」になってしまいます。
ですので、多くの再生事案の場合「商売力の改善」を並行して進めないとなりません。
そして、そのことは第4号でも触れましたとおり、かなり根気の必要な「難工事」となりがちです。

具体的手法としては
1.「選択と集中」による収益体質化
 (1)不採算事業(たとえば「土木工事」「開発事業」等)からの撤退
 (2)「選別受注」による低採算受注の排除(受注時点損益判断による)
 (3)商圏や工種、用途等のカテゴリー選別による得意分野への集中
2.「1」に付帯した固定費圧縮(人員削減、事業所集約等)
3.新商品、新市場進出による高付加価値化
4.組織再構築による業務効率の最適化
といったところが定番で、特に「再生」という局面でなくとも、経営強化策として用いられる汎用的手法といえますが、そこを徹底的に行わなければ、「生き残れる会社」にはならないわけです。

特に「厳しい状況におかれた建設会社」ということでいえば、資金力もなくなっていますし、同様環境におかれた競合も多いので、そう簡単に「3」や「4」みたいに「きれいな経営改善」は厳しく、なにはともあれ「赤字からの脱却」に向け、まずは「1」や「2」を徹底的に行い、「ぬかるみ」から脱することが重要になってきます。
極めて厳しくつらい道のりとなりますが、そこを乗り越えない限り「真の再生」はないということが現実なのです。


大熊康丈(行政書士/中小企業診断士)
http://www.admin.vc

執筆者プロフィール

中小企業診断士 大熊康丈