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「中小建設業の事業再生の考え方・進め方」 第7回 産業構造と事業再生

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これまでの6回は、事業再生そのものについてのお話しでした。
なにぶん専門用語が多く、どうしても難しい印象が強くなってしまいがちだったと思いますが、なんとなくでもご理解いただけていますでしょうか?

今回は、わが建設産業において、前回までお話したような事業再生がどのように行われ、どのような期待がされているかを切り口にお話しし、まとめに入っていきたいと思います。

昨今、建設業の疲弊は著しい感があり、一般的に言われることに「バブル崩壊の影響」とか「公共工事の急激な減少」などがあります。
しかしながら、いわゆる「バブル期」以前にも「建設冬の時代」なる時期がありました。これもオイルショックの後遺症等々と言われますが、もう少し大きな流れで見れば、その当時すでに「高度成長期の終焉」を迎えており、故に大口のインフラ整備も減少し、業界の冷え込みを迎えた、というところでないでしょうか。

つまり、大きな流れとしては、日本経済全体が高度成長から巡航速度化する中で、本来であれば建設投資がもう少し緩やかに減少していくべきところに、バブルの発生と崩壊、その対策としての「内需拡大公共投資政策」の出現と終焉、という特殊要因が割り込み、結果として極めていびつな需給構造に陥ったというのが実情と思うわけです。

いずれにしても、産業全体の疲弊の大きな要因に、オーバーストア状況があることは間違いのないところです。それゆえ「事業再生」の名の下に不振業者の事業をなんでもかんでも継続させていくことについては、マクロ的視点から言って、大きな問題があると考えざるを得ません。

現に、国土交通省からも、事業譲渡や会社分割に伴う入札参加資格等の円滑な継承に関する通達がでており、事業再生の現場では大変助かる内容になってはいます。
http://www.mlit.go.jp/common/000011840.pdf

この通達の前身(旧建設省時代に出されたもの)では、経営基盤強化のための「企業統合」を目的である旨が記載されており、その後の「業界再編の円滑化」に関する諸通達で引用されるなど、国の方針としても「業界再編」が主軸にあることが見えてきます。

そして今般、「改正産業活力再生法」で、事業譲渡や会社分割に伴い、許認可までも承継できる制度が新設されました。
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/2009/download/090622SeidoFlow.pdf

しかしながら、こうしたことは、産業をとりまく基本構造からみると、「再生」よりも「再編」を加速させるツールになるのではないでしょうか。

次回はいよいよ最終回、このあたりのことをもう少し深掘りして、まとめたいと思います。

大熊康丈(行政書士/中小企業診断士)
http://www.admin.vc

執筆者プロフィール

中小企業診断士 大熊康丈