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Catch-up 働き方改革、認定制度で後押し

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 公共工事の発注制度で、働き方改革を企業の評価に取り入れる動きが加速している。企業評価の指標とされることが多いのが、「くるみん」(子育て支援)、「えるぼし」(女性の活躍促進)、「ユースエール」(若者の採用・育成)の認定制度だ。これらの認定を受けた企業は2023年1月から経営事項審査で加点される他、工事発注時の総合評価で加点する国や地方公共団体も増えている。
 今回の経営事項審査制度の改正は、建設業界の担い手の確保・育成を狙ったもの。これまでもW点(企業の社会性等評価)の項目では社会保険の加入状況や技術者・技能者の育成状況を評価に取り入れていたが、ワーク・ライフ・バランスに資するような取り組みにも光を当て、一連の認定制度に最大5点を配点した。国土交通省は、女性を含めて働きやすい環境を整えるとともに、業界全体のイメージアップに役立てたい考えだ。
 工事の発注段階でも国交省などは、総合評価落札方式・企画競争入札でこれらの認定企業に対する加点制度を整備している。この制度の活用実績は▽18年度に約400件▽19年度に約900件▽20年度に約3500件―と増え続け、20年度には適用可能な案件全体の13・4%を占めた。
 「くるみん」は4月から認定に必要な男性の育児休業取得率を引き上げた。これに伴い、総合評価での加点もアップした。国は、先んじて働き方改革に取り組む企業への配点を高める姿勢を明確にしている。今後は認定を受けた企業の入札参加率、落札率の可視化を進め、制度の実効性を高める考えだ。
 同様の制度を取り入れている都道府県・政令市も増えつつある。21年度時点では、15団体が加点を「実施済み」となっている他、9団体が「検討中」「検討予定」だった。補助金や交付金などの優遇措置の要件にこれらの認定を取り入れている例も多い。
 では、実際に認定を受けている建設業者はどれほどあるのか。厚生労働省が学生や求職者向けに公開している職場情報総合サイトによると「くるみん」(上位の「プラチナくるみん含む」)が104社、「えるぼし」が88社、「ユースエール」が130社で、約14万社ある経審の受審企業のごく一部にすぎない。特に「くるみん」「えるぼし」は大企業が認定の過半数を占めている。
 恒常的な人手不足に悩まされている建設業の中でも、とりわけ中小企業にとって働き方改革は「待ったなし」の課題のはずだ。国が多彩な支援メニューを整備している今が、ワーク・ライフ・バランス改善の好機と言える。