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電帳法対応で脱”どんぶり”          @デジタル化の歴史と今後の行方

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 建設業界のIT化は他の業種に比べて残念ながら少し遅れていると言われています。一方で、建設業界にとって、かつてなく大きなデジタル化という変革が求められる時期が、もう目の前に迫っています。それがどんな効果を今後もたらしていくのか、そのための備えはどうすればいいのかを全12回の連載で書かせていただきます。
 まず、これまでの建設業界のデジタル化の歩みを振り返ってみましょう。代表例は、1994年1月にスタートしたCORINS(工事実績情報システム)や、2002年に国土交通省が発表した「建設CALS/EC(公共事業支援統合システム)」です。
 しかし、「CORINS」も「建設CALS/EC」も、発注者側が管理しやすくなるなどのメリットがあっても、建設会社にとっての作業の合理化などのメリットは小さなものでした。
 17年3月からは、人手不足への対応や働き方改革を促進するために、国の「IT導入補助金」がスタート。フロント業務(案件管理・CAD・積算など)やバックオフィス業務(会計・給与・人事など)において、中小のみならず零細の建設会社にまでもITが導入され始めました。コロナ禍を経て、テレワーク環境で利用できるクラウドの導入などもメリットが大きく、導入する建設会社が増えています。
 さらに政府はデジタル化への切り札とも言える電子帳簿保存法(電帳法)の改正や、インボイス制度の導入により、企業の働き方改革や生産性向上の取り組みをさらに加速しようとしています。
 22年にスタートした改正電帳法は、宥恕(ゆうじょ)期間が設けられたものの、24年1月からは義務化し、違反した場合の罰則が設けられています。インボイス制度も23年4月からスタートします。さらに、建設業が猶予されてきた時間外労働の上限規制の適用も24年4月に控えており、企業経営の合理化、デジタル化は待ったなしです。一連の法改正は、発注者側と建設会社側、双方にメリットがあります。これまで導入してこなかった、使いこなしてこなかった建設会社にはデジタル化への絶好の機会だといえるでしょう。

執筆者プロフィール

株式会社建設ドットウェブ 代表取締役社長 三國浩明

三國浩明
株式会社建設ドットウェブ 代表取締役社長
土木建築会社に就職するも、コンピュータ業界に未来を感じ退職。長年に渡り、建設会社のデジタル化に従事し2001年に、原価管理システム開発会社を創業。2019年には、税理士や金融機関などに中小建設会社の経営ノウハウを発信する原価管理研究会を発足。著書として「利益を生み出す 中小建設業 原価管理術」(幻冬者)がある。