建滴 動き出した国土強靭化 背骨の通った施策を
2013/1/21
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政府は、事前防災・減災対策を中心とする公共事業費約4兆7000億円を盛り込んだ2012年度補正予算案をまとめ、15日に閣議決定した。補正予算が成立すれば、自民党が選挙公約に掲げた「国土強靭(きょうじん)化」に向けた取り組みがスタートラインに立つことになる。
国土強靭化は、大規模災害の未然防止や災害発生時の被害拡大の防止を目的に、今後10年で緊急輸送路の整備、建築物耐震化、避難路・津波避難施設の整備、密集市街地対策などを進めるという構想。老朽化が進むインフラの補修・修繕も対象の一つだ。今後3年間を対策の集中期間と位置付け、15兆円を投資するとしている。
17日に開かれた自民党の国土強靭化総合調査会(二階俊博会長)には、早朝にも関わらず多くの関係団体や報道関係者が詰め掛けた。野党時代から議論を重ね、国土強靭化を打ち出した同調査会が開かれるのは政権交代後初めてで、関係者の関心の高さがうかがわれた。
この会合で、出席した多くの議員から上がったのが、国土強靭化の担い手となる建設業の弱体化を心配する声。いずれも「災害時に出動できる企業が減っている」「若手技術者を育成する余裕がない」「公共事業が一時的に増えても、技術者を新しく雇用することができるのか」など、10年以上に及ぶ建設投資の減少で疲弊している建設業の訴えを代弁する内容だった。
議論は入札契約制度にも及び「低入札価格調査基準価格の一般管理費を引き上げるべきだ」などと、ダンピング対策の必要性を訴えた。こうした状況を抜本的に打開するため、自民党は公共調達に関する新法を制定し、予定価格の上限拘束性の見直しなどを図る考えだ。
一方、政府は、国土強靭化を進める上での枠組みを構築するための法整備にも着手しており、1月28日に開会する次期通常国会で「国土強靭化基本法」を成立させる考えだ。基本法の成立後には、南海トラフ巨大地震や首都直下地震への対策について、特別措置法の制定も検討している。
国土強靭化を具体化するための補正予算が編成されたとはいえ、担い手となる建設業の受注環境の整備、国土強靭化の枠組みの構築など課題は少なくない。
17日の調査会に出席した古屋圭司国土強靭化担当相は「国土強靭化の目的には、減災・防災対策、デフレ対策と並び、地域産業の競争力強化という重要な要素が含まれている」と国土強靭化の基本的な考え方を語った。こうした理念を確実に施策に反映し、取り組みを一過性のものとしないためにも、政府は残された課題を解消し、国土強靭化に背骨を通すことが重要だ。政府・与党には、建設業が国土強靭化の歯車になるのではなく、国土強靭化を牽引する存在となる立法措置を期待したい。
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