期待感を実感に変える手だてを
2013/2/25
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国の2012年度補正予算が25日にも成立する。09年度の補正予算に次ぐ大規模なもので、臨時交付金などを含めた実質的な公共事業費は4兆7000億円。国土交通省分だけ見ても1兆8000億円に上り、別途2600億円のゼロ国債(国庫債務負担行為)を設定している。再登板を果たした自公政権が緊急経済対策で掲げた「復興・防災」「成長」「安心・地域活性化」の実現に向け、1日も早い執行が求められている。
国交省は12年度補正予算に基づく事業の迅速化・効率化を図るべく、入札手続き期間の短縮や総合評価落札方式での資料提出の簡素化、技術者の専任要件緩和といった方向性を提示してきた。地方整備局もこれらを肉付けして体制を整えている。
関東地方整備局の例を挙げると、数百件規模になるとみられる工事の発注で、地元企業の受注機会に配慮しつつロットを大型化するため、事務所契約の上限金額を時限付きで3割引き上げる。総合評価は工事実績重視型の適用も可能にして、入札手続きの期間を簡易型の半分で済ませるとともに、手持ち工事量の評価などで受注者の偏りを防ぐ。
12年度内契約予定工事は工事開始日を4月1日に設定して技術者の専任期間を緩和。不調対策として通常は2回で終わる入札の回数を3回まで増やす。概算数量や詳細設計付きで発注する工事は、初回の設計変更で当初予定価格の3割超の追加を認める。
業務でも、拡大型プロポーザルと実施方針確認型の総合評価を使い分けて手続き期間を短縮。12年度内の技術者の手持ち業務量を審査・評価の対象から外して参加しやすくする。
ただ、12年度は残すところ1カ月余り。年度末というタイミングで、国交省をはじめ国の機関が執行を急ぐあまり一気に発注すれば、公共投資の縮小にあえいできた建設業界が膨大な仕事量を前に混乱しかねない。労務費・資材価格の上昇に拍車が掛かり、受注できても赤字で完工するような事態が続発する可能性さえある。
その意味で国交省は「ゼロ債金融保証」や「スライド条項」といった善後策についても、早い段階で明言しておかなかったことが惜しまれる。成立にこだわらず、12年度補正予算案が国会に上程された1月末の時点で箇所付けや発注見通しを速やかに公表して、建設業界の心構えを一層促すこともできたのではないか。
建設経済研究所と経済調査会は12年度補正予算の繰り越しなどを前提として、13年度の政府建設投資が9年ぶりに20兆円台を回復すると予想する。帝国データバンクの調べでも、建設業では景況感の上昇に加え、賃金改善を見込む企業の割合の伸びが顕著に表れている。
12年度補正予算と13年度の当初予算、さらには「国土強靭(きょうじん)化」によって、建設業界の期待感が実感に変わり、結果としてよりよい社会インフラが国民に提供されてこそ、日本経済の再生につながる。そのための手だてを惜しんではならない。
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