地域守る心柱≠ナあり続けたい
2013/3/4
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地域建設企業で構成する建設トップランナー倶楽部がことし7月2日に開くトップランナーフォーラムのタイトルが「インフラの町医者をめざして」に決まった。8回目となる本年の開催趣旨について米田雅子代表幹事は「地域防災の最前線」「地域のインフラ堅守」「地域の産業創出」の3本を柱に据え、「地域建設企業の新たな使命と役割を皆で考える場にしたい」と話す。
太田昭宏国土交通大臣は、公共事業は「命を守る事業」と強調。いま必要なのは防災・減災、老朽化対策であり、ことしは「国土メンテナンス元年」であるとも言い、前政権までとの違いを明快に語る。目玉の一つの「防災・安全交付金」についても、地方が積み上げた事業を自治体が実施しやすいようにしたと説明する。国土のレジリエンス(=復元力)強化の方向は、先月26日に成立した補正予算と2013年度当初予算案にも色濃く出ている。いよいよ地域建設企業の出番だ。
このような転換期を迎えている今だからこそ、地域建設企業の現実と目指すべき姿をもう一度確認しておく必要があるだろう。建設産業はよく地域の基幹産業といわれるが、はたして現実はどうだろうか。就業者数の大幅な減少、技術者や技能者の大量離職、若年入職者の激減など、建設ものづくりの基盤を脅かす問題が実に多い。特に給与水準の低さは目を覆いたくなる。生活保護者世帯にも劣る建設産業就労者世帯の窮状を報じるテレビ番組もあった。これでは建設飢饉≠ニ言ってもよいくらいだ。
ボランティアにも似た過重な要求に何度も応え続けてきた地域建設企業にこれ以上の消耗は酷だ。同倶楽部の講演会で国土交通省の深澤淳志技術審議官は、建設産業を象徴する新たな5Kの中に安い給料≠挙げた。前述の倶楽部に加盟する幹事社の経営者は、上がらない労務費の調査の在り方に怒りをあらわにする。これでは、基幹産業としての誇りを持てと言われても持ちようがないではないか。
東京スカイツリーの塔の中心部には高さ375bの心柱(しんばしら)≠ェある。世界初の制振システムであり、地震や強風による本体の揺れを絶妙に制御し、本体への影響を最少化するという。この心柱の発想は法隆寺五重塔を初めとする日本の木塔に使われていた制振技法にあるようだ。言うまでもなくこの技法を考案し、継承してきたのは日本の匠たちであり、技術者たちだ。
地域に根差しインフラを支える地域建設企業は、患者に寄り添い、予防検診し、緊急時には献身的に治療に当たる町医者のような存在だ。公共事業や建設業に吹く風が少し追い風になったからといってぬか喜びしている暇はない。経営力を強化し、技術力を磨き、社会基盤への貢献を愚直なまでに継続する。地域建設企業は、有事にあっては存分にその機能を発揮し、微動だにせず本体を守る心柱≠フような存在でありたい。
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