共有したい「顧客満足」への想い
2013/3/25
印刷 | |
14年4月に予定されている消費税率引き上げを前にした住宅の駆け込み需要は少しずつ顕在化している。東日本大震災の被災地では、住宅再建がようやく動き始めた。第一生命経済研究所(千代田区)によると、13年度の住宅着工戸数は94・5万戸で4年連続増える見込みだという。
その一方で、工事量の増加に伴い労務不足は深刻さを増している。建築費も上昇局面が続く。自民党が掲げる国土強靭(きょうじん)化政策が本格化すれば、たとえ建設投資は増えたとしても、資材や職人の確保、単価の高騰といった問題に対する懸念はますます高まる恐れがある。
安倍政権が掲げる経済政策は「アベノミクス」と呼ばれ、今のところ市場は好感している。株価はおおむね上昇基調にある一方で、不動産は価格上昇を見込んだ売り惜しみによる流通の停滞を危ぶむ声がある。大都市圏は都心回帰で人口流入期にあるとはいうものの、将来的には人口減少に直面することは避けられそうにない。分譲住宅市場では、すでに市場縮小を見越した顧客争奪が始まっており、経営者にとっては、さながら会社存続を賭けた消耗戦といえなくもない。
こうした厳しい事業環境では、コストの最適化が喫緊の課題だ。すでにデベロッパーは用地購入の方法を多様化したり、建築工事の見積もり依頼先を拡大するといった取り組みを実践している。ただ、建築費には下げ要素が見当たらない。もっと抜本的な対策を講じる必要がある。
では、コスト最適化のポイントはどこにあるのか。分譲住宅市場の調査、コンサルティングを手掛けるトータルブレイン(港区)の久光龍彦社長は「デベロッパーとゼネコンはお互いに工期や予算の調整を徹底すべきだ」と話す。3月末に竣工期日が集中する分譲住宅は、現場の繁忙期が重なることが多く、必然的に職人確保が難しい。ゼネコンがデベロッパーに対し、着工前に工期延長を依頼する例は珍しくないとも聞く。しかし、工期の長期化は金利負担など事業費の増大につながりかねない。
今後、さらにデベロッパーとゼネコンが希望する予算額をめぐり激しい攻防を繰り広げる様は想像に難くない。デベロッパーは、過度な見積もり徴集がゼネコンに多大なコスト負担を強いることを認識し、施工者決定に至るまでの業務を効率化する必要がある。
とは言うものの、乾いた雑巾を絞るようなコストダウンには限界がある。仕入れから企画、開発に至る事業のプロセスを、お互いが多角的に検証することでコストの最適化を実現したいところだ。コスト積み上げ方式で算出した価格は、顧客には到底受け入れてもらえない。高品質の住宅を適正価格で顧客に提供する―。こうした「顧客満足」への想いを共有できたとき、デベロッパー、ゼネコンともに経営の持続力が高まるはずだ。
関連記事
- 土木の有効求人倍率 11年連続で上昇 (5/2)
- 水分野のデジタル活用 職員提案で働き方改善 (5/2)
- PFI導入を伴走支援 官民連携で公共機能強化 (5/2)
- 全国安全週間 ポスターに中川絵美里さん (5/2)
- 会社に報告した残業時間 実態と「乖離」は2割 (5/2)
- 日建連調査 中堅技術者の減少顕著 (5/2)
- 耐火木質ビル開業 北海道の産業と若者を支援 (5/1)
- 総務省 空き家は過去最多の899万戸 (5/1)
- WLB推進企業への加点 国の工事の18・0%で (5/1)
- 国交省人事(5月1日付) (5/1)
特集コーナー
このコーナーでは、入札情報関連の話題や建設業界注目の情報、工事ニュースなどを取り上げます。