中古市場の整備を急げ 人口減少時代の住宅供給
2013/5/20
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2012年度の新設住宅着工戸数は、前年度比6・2%増の89万3000戸となり、3年連続で前年を上回った。主な要因に、住宅ローンの金利優遇策などが挙げられる。14年4月の消費増税導入を前に、首都圏では住宅展示場の来場者数が増加しており、多くの世帯が今まで以上に住宅購入を現実のものとして受け止め始めている。本来なら、不動産業界は手放しで喜びたいところだが、反応は冷ややかだ。増税に伴う住宅の駆け込み需要と、反動減への対策に頭を悩ませているからだ。
政府は、住宅着工を安定的に推移させるため、住宅ローン減税を拡充する方針を掲げている。しかし、多くの人が多額のローンを背負わなければ新築住宅を取得できないことに変わりはない。駆け込み需要に対する反動減の抑止策にとどまらず、所得水準に応じた安価で良質な住宅の供給という意味でも、中古住宅を流通させる市場整備が早急に求められる。
長年、わが国の住宅政策は新築の促進が中心で、景気・経済対策の重要な一角を占めてきた。「スクラップ・アンド・ビルド」を繰り返してきた結果、住宅の寿命は30年程度で欧州諸国の半分にも満たない。住宅取引に占める中古物件の割合も、米国の約8割に対し、日本は08年時点で13・5%と低水準だ。
さらに、深刻な事態を招いているのは、人口減少に伴う空き家問題だ。総務省の統計(08年10月時点)によると、総世帯数約5000万世帯に対し、住宅の総戸数は5700万戸を超え、約700万戸も上回っている。
世帯数は今後、核家族化や単身世帯の増加により減少に転じる。「家余り」の状況に、拍車が掛かることは間違いない。都市部では、放置された空き家が防災面で支障になることも心配される。新築物件の供給に偏りすぎた住宅市場を、根本から見直す必要がある。
まず、消費者の目を中古住宅に向けるための一歩として、品質や価格に対する不安要素を払しょくすることが重要だ。現状の中古住宅の物件登録情報は、立地条件や建築年数が資産評価の主要項目になっている。耐震性や省エネ性能、過去のリフォーム履歴など、購入の判断材料となる項目にまで幅を広げ、住宅性能をより客観的に表示するよう改良すべきだ。
一方で、住宅ローン残高の一定割合を減税する制度では、新築以上に中古住宅を優遇する措置の検討も求められる。耐震化やバリアフリー、リフォームを促す税制にシフトすれば、優良な中古物件の戸数が増え、流通の促進につながる。
国土交通省は、消費者が中古住宅の性能や取引履歴を把握できる情報システムの検討に入る。住宅・不動産会社や鑑定士など供給側のプレーヤーは、相互の連携を深めながら、異なる世代が優良な中古住宅を引き継ぎ、暮らすことができる市場の形成を急ぐべきだ。
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