成長戦略 弓を射るのは誰か
2013/6/24
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安倍晋三首相が大胆な金融政策、機動的な財政政策に続く「成長戦略」という名の三本目の矢を放った。成長戦略には、大都市の国際競争力を強化する施策として「国家戦略特区の創設」「PPP/PFIの積極活用」が掲げられている。経済成長という的を射るには、資本が集まる大都市の国際競争力を高める必要があることは言うまでもない。具体像はまだ見えないが、ロンドンやニューヨークといった世界的な大都市に匹敵する都市をつくり、世界中から技術や人材、資金を集め、ビジネス環境を整えるという。また職住近接を実現するため、市街中心部の容積率規制を変えるとしている。
すでに東京では国際競争力強化に向けた民間の取り組みが始まっている。例えば大手デベロッパーの三菱地所(千代田区)は、今後10年間に国内外企業のビジネス支援を目的としたオフィスを最大1万坪供給するという。こうした動きは東京都心だけでなく他の都市へ展開したいところだ。それには国と地方自治体、民間の協力が不可欠。国から地方への権限移譲、大胆な規制改革など、できることから早急に着手すべきだ。
一方、「PPP/PFIの積極活用」では民間資金を生かしたインフラ整備を盛り込んでいる。具体例としては、首都高速都心環状線の築地川区間の掘割(2`)にふたをすることで6fの土地を生み出し、沿道を再開発する話が出ている。空中権売買を組み合わせることで公的負担を減らせると言うが、空中権の持ち出しについてはいささか唐突な印象を受ける。
日本不動産研究所(港区)によると、そもそも空中権には法律上の明確な定義はない。土地の高度利用を実現するため、余剰容積を他の土地に移転する権利のことを指すのが一般的だという。容積移転の例では、東京駅赤レンガ駅舎が記憶に新しい。都市計画法上の特例容積率適用地区内にある駅舎の保存・復原を図るとともに、丸の内など周辺の都市再生を促進したことで注目されたのだが、首都高速・築地川区間はこの適用地区には含まれていない。
とはいえ、高度成長期に建設されたインフラの更新は待ったなしだ。空中権を売却し、インフラの更新費用をねん出しようとする意図は理解できる。もし東京オリンピック招致が実現すれば、新たなインフラ需要もでてくるだろう。計画実現には東京都や中央区、沿道建築物の所有者など関係機関が連携し、都市計画手続きを迅速に進めるとともに、民間の資金・ノウハウの活用に向けて知恵を絞る必要がありそうだ。
安倍首相は成長戦略で日本経済を再生すると言う。政策の具体化と実効性、スピード感が問われるのはもちろんだが、的に向かって弓を射るのは誰なのか。20年以上続いた経済低迷期に染みついてしまった従来の感覚にとらわれない覚悟と行動が、われわれ民間に求められている。
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