策定へ猶予なき原発政策と再生可能エネルギー 「発送電分離」の環境を整えよう
2013/8/5
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この夏は、東日本大震災での東京電力福島第1原発事故後初めて、節電に「数値目標」を課さない夏になった。企業の節電への取り組みや、国民の節電意識の向上が電力供給に幾分かの余裕を生んだようだ。しかし、大半の原発が停止した状況の下では、電力の安定供給は決して万全ではない。自民党政権は「原発ゼロ」ではなく、「原発依存度の低下」を主張している。再生可能エネルギーの活用を含めた、今後のエネルギー政策の在り方を早急に固めなければ、この国の未来に暗い影を落とすことになる。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度導入から1年が経過。大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設が各地で活発化している。建設業も幾ばくかの恩恵を受けたが、パネルなどのメーカーは生産が需要に追い付けないほど活況を呈しているようだ。
買取制度の導入後に運転を始めた国内の発電施設の出力の合計は、2013年2月末時点で166万`h。これは、国内最大クラスの原発1基分に相当する。
米国の調査会社の見通しでは、日本国内で13年に新規導入される太陽光の発電能力は前年比で2・2倍に拡大。市場規模はドイツを抜き世界のトップに躍り出る勢いを見せている。
ただ、再生可能エネルギーの普及・拡大状況は、全てが順風満帆とは言えない。
象徴的な事例がある。北海道電力が募集した20万`hの風力発電の買い取り枠に対し、事業者からの申し込みは約9倍に達した。送電網の容量不足を理由に、応募の超過分を泣く泣く「門前払い」し、太陽光発電にも上限枠を設けた。事業者のポテンシャルを発揮する機会が失われてしまっただけでなく、施工を請け負う建設業にとっても大きな痛手となった。
政府は、送電網の整備費として250億円を予算化している。しかし、再生可能エネルギーを代替エネルギーの中心に据えるのであれば、電気を一時的に蓄える大型蓄電池の大量導入なども視野に入れて、調査費などを予算化するべきだ。
安倍晋三首相は、今後のエネルギー政策に大きな影響をもたらすであろう、エネルギー基本計画の策定に際し「3年間で再生可能エネルギーを最大限導入し、10年以内に原発比率を含めたベストミックス(最適な組み合わせ)を示す」と表明している。とは言うものの、将来にわたるエネルギー政策の全体像を固めるための時間に余裕はない。
ベストミックスの構築には、核燃料サイクルなどの問題をクリアし、どのように原発依存度を低下させるのか、具体的な道筋を示す必要がある。原発の将来的なビジョンを明確にした上で、太陽光など他の代替エネルギーの数値的目標を固めなければ、日本のエネルギー政策は手詰まりになる。
経済成長と環境負荷軽減を両立する「グリーン経済」の実現に向けて、こうした流れを停滞させてはならない。懸案となっている「発送電分離」などの電力改革に加え、再生可能エネルギーの推進に不可欠な送電網の整備・拡充を推進する議論を加速する必要がある。
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