「未来をつかもう」建設業と 五輪の実現と課題
2013/8/26
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2020年のオリンピック・パラリンピック開催都市決定まであと2週間。ロンドン五輪でのメダルラッシュを経て“東京五輪”に対する国民の機運も高まり、「Discover Tomorrow〜未来(あした)をつかもう〜」を招致スローガンに掲げる東京開催が現実味を帯びてきた。
20年東京オリンピック・パラリンピックの立候補ファイルでは、前回の五輪招致計画の反省を踏まえ、選手・関係者の移動時間の最小化を基本とした会場配置を打ち出した。全37会場のうち新規整備は22カ所。このうち11会場は「都市の中心で長期的なレガシー(伝統)を提供」する施設として恒久的に使用する。最短の移動時間を実現するため競技会場の85%を選手村から半径8`圏内に整備するなどコンパクトな配置が特徴だ。
とはいえ、既存施設の改修を含む恒久施設の工事費は約3800億円、仮設会場を含む建設工事費の総額は4500億円に上る。多くの来訪者の移動を円滑にするためには公共インフラの整備も欠かせず、関連する事業を合わせれば建設投資は大きく膨らむだろう。開催までの7年間でこれらの事業を着実に進めるには建設産業界の“総力”を挙げる必要がある。
では総力を挙げる体制は整うのか。東日本大震災の復旧・復興事業に伴う建設技術者・技能者の不足は依然として解消のめどが立たず、円安の影響による資機材の値上がりもあり、都内でも大型公共事業の入札で辞退や不調が相次いでいる。設計労務単価の大幅な上昇を受けた予定価格の引き上げも奏功せず、地元の建設業団体では「社会保険未加入対策への対応もあり、発注者の積算と受注者の見積もりが合わない。無理して落札しても利益が出ない」とその理由を指摘。東京五輪の開催が決まれば「辞退や不調の話はもっと大きな問題になる」と予測する。前回の招致活動の際、計画通りの施設整備に危機感を抱く都関係者が少なくなかったが、今回の状況はさらに深刻だ。緒に就いたばかりの復旧・復興事業にも影響が及びかねない。
建設投資が右肩下がりを続け、競争環境の激化の中で極端な低価格入札が多発。建設業で働く若者は減少の一途をたどる。そんな悪循環の中で発生した大震災、そして現実味を帯びる五輪招致。発注者も受注者もすぐに対応できないのが実情だろう。しかし、国家的事業として社会基盤を着実に整備していくことが求められているのだ。
ヒト、カネのないない尽くし。そんな状況の中で「未来をつかむ」ためにも建設業の再生に何が必要か、そして公共事業がなぜ必要かをあらためて議論し、五輪同様に国民の関心を高め、解決の糸口を早急に見付けなくてはならない。実行のタイミングは今しかないのだから。
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