「ヘルスケアリート」 民間資金の新たな調達手法に期待
2013/10/7
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有料老人ホームなどの介護施設や、病院などの医療施設を投資対象とする複数の「ヘルスケアリート」が、2014年6月にも東京証券取引所に上場される見通しだという。多様な高齢者向けの住まいや、良質な医療施設の供給を可能とする「民間資金の新たな調達手法」の誕生を歓迎したい。
高まる多様な高齢者向け住まいに対するニーズ。中でも右肩上がりの伸びを見せているのが「有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅」だ。
介護保険法施行前の1998年に全国で246施設しかなかった有料老人ホームは、12年には7563施設にまで増加。政府が「住生活基本計画」(11年3月)で「高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を、20年に3〜5%とする」とした目標を掲げ、同年10月に創設した「サービス付き高齢者向け住宅制度」の登録戸数は9万3911戸(13年1月末現在)を数えるまでに急増している。
これら二つの施設は、いずれも高齢者のための住居という基本的な性格を有し、「へルスケア施設」の中核的な施設の一つであると同時に、不動産としての側面も併せ持つ。
施設の新規開設や増改築には、土地取得や建設費用などに多額の資金を要する。
すでに、この分野に参入している上場企業の中には株式や社債などを発行する直接金融も併用し、資金を調達する企業もあるが、一部の上場企業などを除き、大方のヘルスケア施設事業者の資金調達の手段は限られている。施設の運営者や地主が銀行などに担保を入れて不足資金を借り入れるのが一般的だが、時として取引金融機関の融資スタンスが変化し、融資に支障をきたすこともあるという。
この国は、子どもと同居する世帯が減少し続けている。その一方で、高齢者単身世帯と高齢者夫婦のみ世帯は増加し、この二つの世帯形態だけで高齢者世帯全体の6割を占めている。高齢者の暮らし方の変化が、多様な高齢者向け住まいの需要に供給が追い付かない状況を生み出している。
「住まい整備率」は、65歳以上人口に対する有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの総数の割合。その全国平均は4・1%だ。四国4県や岡山の住まい整備率は全国平均を大幅に上回っているものの、今後、急速に高齢化が進行すると予想されている東京、神奈川、愛知、大阪などの都市部の施設量は、決定的に不足している。
都市部では地価や賃料の高さが施設整備の大きなネックとなっているが、幸いなことに、ヘルスケア施設は立地条件が最大の付加価値とはならず、不動産としての価値は、提供するヘルスケアサ―ビスとその事業収益で決まるのだという。
いま、約42万人もの高齢者たちが、特別養護老人ホームなどの介護老人福祉施設への入所を待っている。この国は、高齢社会の多様なニーズに応える住まいを安定的に供給し続けていけるのか。「ヘルスケアリート」が、高齢者の住まいの整備に果たす役割と期待は、決して小さくはない。
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