増加する空き家 安全対策と有効活用を
2013/11/25
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全国的に管理不十分な空き家が増えている中、防災面などの安全対策が進んでいない。もし、老朽化した住宅の壁が崩れ落ちて通行人がけがでもすれば、賠償責任を負うのは所有者だ。火災、不審者の侵入、ごみの不法投棄、悪臭の発生など安全・衛生面でも問題が山積している。安全対策を強化するとともに、有効活用など空き家を減らす取り組みにも本腰を入れるべきだ。
総務省の調査によると、全国の空き家数は、戸数ベースで1988年には395万戸だったが、2008年には757万戸に増えている。少子高齢化や過疎化の進行がその理由として挙げられており、空き家率は13%に達する。
その多くは賃貸や売却用として管理されているが、173万戸と推計されている木造一戸建て住宅の対策を急ぐ必要がある。ただ、そうは言っても遠く離れた場所に住む所有者に撤去を任せるのは限界がある。
そもそも、空き家が発生するのには何らかの理由があるはずだ。まず相続の問題で、やむを得ず未利用の建物が放置されているケースが考えられる。更地にするには多額の解体費用が発生するし、更地にしたほうが固定資産税が高くなるといった税制上の問題もあるようだ。
自治体の中には、適正な管理を所有者に求める条例を制定するところも増えている。自治体がその気になれば、建築基準法や消防法に基づいた取り壊しや修繕の指導も可能だ。
しかし、即時の解体撤去など強制力を持った対応を講じるのは困難だ。取り壊し手続きの透明化、税金投入に対する住民の理解も必要だ。自治体が条例に頼らなくても問題解決に能動的に動ける仕組みが求められている。
こうした状況の中、自民党の空き家対策推進議員連盟は法整備に向けた中間報告をまとめた。市町村には税務情報の活用可能性を含めた実態調査を求め、立ち入り調査権を付与する必要性も指摘している。
この問題を解決するには、所有者の特定が欠かせない。固定資産税の納入情報の利用は地方税法の秘密漏えいに抵触する、などとして税務情報の利用はできない状況だが、特例として活用できるようにすれば、より早い段階で安全対策につなげることができるだろう。
中間報告には、自主撤去を促すために強制力のある施策も盛り込んだ。特に危険な放置空き家を「特定空き家」に指定。所有者への改善命令を可能にするほか、従わない場合は行政代執行を実施できるようにするという。
空き家を有効活用する方策も考えなければならない。空洞化が進む中心市街地の空き家を安く賃貸できる仕組みや、売買での税の優遇措置があってもいい。
「空き家」を単に「危険物」扱いしていてはもったいない。観光施設や移住者用住宅だけにとどまらず、まちの活性化や再生につながる「資源」としての活用の道を広げたい。
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