発注者、受注者が応分の負担を
2014/1/27
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不動産・建設業界は、土地代・建築費・労務費のいずれもが上昇する『トリプル高』に直面している。景気の回復傾向を受けて、デベロッパー各社の用地取得競争は激しさを増し、円安の影響で輸入資材の価格は上がり、慢性的な職人不足から労務費も上昇傾向にある。
建築コストが高騰するなか、東日本大震災の被災地では復興需要が本格化。景気回復に伴い、民間の設備投資も増える見通しだ。このように工事量の急激な増加が予想される状況下で、建築コストの『トリプル高』をどう凌ぐか。発注者である不動産業界と受注者である建設業界の双方は、膝詰めで解決に向けた糸口を探ってほしい。
昨年11月には、不動産協会の木村惠司理事長と日本建設業連合会の中村満義会長がコスト抑制策についてトップ同士の会合を持った。実際の対応は現場に携わる個社の判断に委ねられるものの、発注者と受注者が問題を共有したという点で、この会合の持つ意義は大きい。
とはいえ『トリプル高』を解決する道筋はまだ見えない。例えば労務費をめぐっては、工事を請け負うゼネコンが、現場に入る職人の員数調整に苦慮していると聞く。とりわけ首都圏を地盤とするゼネコンにとっては、職人確保の課題が当分重くのしかかりそうだ。森記念財団(港区)が1月に発表した試算によると、2020年に東京で五輪を開催するに当たり、首都圏で計画されているインフラ整備や再開発事業のうち、前倒しで事業化されるものが相当数ある。五輪開催の波及効果として新たな雇用の創出が期待され、その数は建設業だけでも約12万人に上るという。
職人確保が業界の命題になっているわけだが、若年層の建設業離れは止まらない。若い人たちの入職を促進するため、産官学を挙げてもっと就労環境の整備に知恵を絞る必要がある。
折しも国土交通省は、担い手不足の解消策を話し合う「建設産業活性化会議」を設立、14日に初会合を開いた。建設業団体や学識者を集めたこの会議で今夏をめどに中間報告をまとめる。まずは産官学が現状に対する危機感を共有して若者が業界に明るい展望を抱けるよう、しっかりとした建議が成されることを期待したい。
女性の就業機会を増やす取り組みも、この会議で検討すべき課題の一つだ。女性の入職促進は業界の魅力向上につながると考える。さらに、日本が本格的な人口減少時代を迎えたいま、外国人の雇用の在り方についても検討しなければならないだろう。これから業界に入職しようとする人たちはどのようなキャリアを歩むことができるのか。中間報告は、建設産業でのキャリア形成の道筋を未来ある若者たちに提示するものにしてほしい。
職人不足による労務費の高騰に象徴されるように、『トリプル高』はモノづくりの根幹を揺るがす大きな問題だ。しかし、コスト抑制策を突き詰めるばかりに建築物の性能・品質の低下を招くような事態は避けなければならない。発注者、受注者いずれもが魅力的な街づくりに資する建築物を創出するのだという気概を持って、お互いコストを応分に負担しあう取り組みが求められているのではないだろうか。
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