建滴「身近な災害史を掘り起こせ―産官学連携の防災・減災」
2014/2/17
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また3月11日がやってくる。防災を考える時、大切なことは何か。それは当然、命を守ることだ。そのためには、自然災害の恐ろしさを語り継ぐことが必要だ。被災地だけでなく、全国で地域の災害の歴史を産官学が協力して掘り起し、分かりやすく地域住民に伝えていくことを提唱したい。
日本は災害列島と言われる。火山の噴火、干ばつ、台風による風水害、高潮、土砂崩れ、地震と津波。日本の歴史資料をみると、大災害が繰り返しやってきたことが分かる。ドラマによく取り上げられる戦国時代末期や幕末も天変地異が頻発した時代だ。知れば知るほど、よくぞ先祖は、こんな日本列島で生き残ってきたものだと思う。
火山災害であれば、長崎県の雲仙。平成の大火砕流はまだ記憶に新しいところだが、この山も過去に噴火を繰り返し、おびただしい被害を出してきた。1792年(寛政4年)の噴火では、山腹から溶岩流が北東に流れ出した。そして眉山の大規模な山体崩壊が起きた。崩壊した土砂は海になだれ落ち、対岸の熊本県側を津波が襲うという、いわゆる「島原大変肥後迷惑」も発生した。
また、浅間山も噴火と山体崩壊を繰り返してきた。有名なのは天明の大噴火だ。1783年(天明3年)、4月から始まった噴火活動は大量の噴出部を出した。7月には火砕流、大規模な土石流を引き起こし、せき止め湖の決壊、大洪水、大飢饉へと連鎖した。
繰り返す大地震としてよく知られているのが、太平洋岸の東海地震などである。特に1707年の宝永大地震は、東海、東南海、南海連動型地震と考えられている。この時は富士山の噴火も起きている。
このように大まかな日本の自然災害史は、ある程度、知られるようになっているが、身近な場所でどんな被害が起きたのか、津波はどこまできたのか、被災状況を詳しく調べ、伝えていくことが大事ではないだろうか。実際に自分たちが住んでいる地域のどんな場所でどんな被害が起きたのかが分かれば、どこに住んではいけないか、どこへ逃げればいいかも分かる。防災・減災に大いに役立つはずだ。
例えば、それぞれの地域の中で、古文書の記録を調べるという手段もある。日本の近世は、日記という形で被害の様子が記録されていることが多く、外国と比べて非常に多くの文字資料が残されている。静岡の地方新聞が発行した『実録安政大地震』では、丹念に古文書から被災状況を読み取り、どこで山崩れがあったのか、家屋の何パーセントが倒壊したのか、地域ごとに紹介している。
現代の災害でも同じことが言える。名古屋市を訪れると、伊勢湾台風での洪水水位を示した指標を街の中に見ることができる。身近な被害の記録を、地域住民の記憶に結び付けていくための努力が各地域単位で求められる。そこに地域の建設業が加われば、より具体的な防災情報として住民に伝えていくことができるだろう。
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